【三浦コラム】海外における表現の自由というものを考える

 日本では表現の自由と言うものが個人の権利として認められています。
 勿論の事、公共の福祉に照らし合わせ、それがどこまでかというのは常に議論が絶えず、戦後日本の社会(現憲法下で)において、そのバランスは争点のひとつでもありましょう。ただ、日本では、日本人が思っている以上に裏書のない発言等(それらがデマである場合も得てしてありますが)が黙認される社会です。
 そういう社会で育ってきた日本人は(全ての人ではないですが)、海外に出ても日本人としての意識のままに、不用心な言動を繰り返す傾向にあるのもよく目にするところです。得てしてそれは海外生活でのストレスからの現地社会や国民に対しての批判(悪口)である事も、海外で生活する日本人として身に覚えがあるのではないでしょうか?

miura-c-May15 シンガポールでは最近注目の事件がありました。
 オーストラリアに住んでいるシンガポール人男性と日本人名オーストラリア人女性の逮捕です。彼らはいわゆるニュース発信をウェブやフェースブックなどで行っていました。
 シンガポール政府批判の方向性はあったようですが、タイプーサムというインド系のお祭りでの騒音がうるさいとフィリピン人家族がクレームしたというニュース発信をしました。これはシンガポールが大事にしている国民融和・他の民族との調和を乱すだけでなく、デマと捉えられてもいて、人々を扇動したという疑いなどで、シンガポール入国した後、逮捕拘束されました。
 裁判は始まったばかりですので、これからどうなるかは見えていません(既に2人は保釈され、弁護士を雇っての法廷での判決がどうなるかに注目が集まっています。男性はオーストラリアの父親が生死に関わる状態にあるという事で、シンガポールに戻ってくる事などを条件に一時的な出国が認められました。)。ただ、この先のシンガポールでの裁判、弁護士費用に加え、高額の罰金(もしかすると禁固刑)を払わねばならない結果に終わる事も予想されます。

 この場合は逮捕された1人がシンガポール人ではありますが、もう1人は外国人です。シンガポールの法律は入国時に即適応されます。
 当然ながら、この国に住む外国人にも適応となります。
 この春に改めて初めての海外生活シンガポールで始めた人たちも多いでしょう。
 外国では日本人がどうでもない些細な事と思っている言動が取り返しのつかない事になる場合もあるのを、まず知りましょう。他人の国に住ませてもらっているという意識を頭の片隅にでもとどめ、現地の法律を遵守する事が肝要です。
 例えれば、ラグビーの試合にサッカーのルールを持ち込む事ができない様に、お住まいの国に日本のルールを持ち込む事はできません。
 私どもは、今回の事件を他山の石とし、海外に住む異国人として、気をつけたいものです。