【三浦コラム】政府与党PAPの勝利に終わった2015年総選挙を経て

未だ2011年5月の野党躍進の総選挙が強く印象に残っている中、9月11日にシンガポールの総選挙が行われました。結果は既にお知らせしました様に、政府与党PAP(People’s Action Party)の勝利=得票率が大幅に増えるという結果となりました。

結果は当初私自身も予想した通り(リークアンユー元首相の死去とSG50と名をうったシンガポール建国50周年の余波により、与党がそのまま勝利するかのように見えました)になりました。しかしながら、前回選挙でも大きな役割を果たしたと言われるSNSなどで盛り上がり始めた情報では、野党の勢いが強いとの見方もあり、予測不能な中実際の投票日を迎える事になりました。
野党候補者の数も増え質もあがり、選挙戦での与党批判もあり、野党の当選者が2倍に増えるだろうと言う人もいたくらいです。そういう中、日本のメディアによる報道も野党の躍進を予想していたのを読まれた方もいらっしゃるでしょう。

PAP-2015GE 当初与党が勝利すると考えていた私も選挙期間に入った後は、ひょっとすると、と思い始めてもいました。

結果は与党強し、といったものでした。

今回の結果はシンガポール人のバランス感覚の現れた結果だったのかも知れません。タイやマレーシアなどの近隣諸国の政情不安定、中国発の世界的な株価下落。そして、昨年来の不動産価格の下落傾向などシンガポールの経済的な不安感から、安定を求めたのでは?と。
2012年にあった補欠選挙の野党WP(Workers’ Party)の連続した勝利も予想を鈍らせたのかも知れません。

今から思えば、PAPは補欠選挙での敗北を十分に踏まえて、今までになく謙虚に地道な地元民への配慮を踏まえた選挙努力をしていた事、また恒例になってもいる巧みな自党に有利な選挙区の変更や2011年から増加した新国民約30万人の選挙権保持者の支持もPAPに有利に働いたという分析もとある記事にて目にしました。

なお、今期はリーシェンロン首相の去就も注目されると思われますが、今回は与党の新たな国会議員メンバーも多く、次のシンガポールの政治を担う世代を育てられる与党の底力を見せつけられた選挙でした。

特に政治が大きく揺れているマレーシアの今後からも目が離せず、急速に進む老齢化社会の中どう福祉に力を入れていくかなど、これまで同様にシンガポールの政治家には強いリーダーシップが求められて行く事でしょう。

国会議員数89人中83人が与党PAP、野党の当選者は2選挙区WPのみの6人
政党名 当選者数(立候補者数)得票率
PAP = People’s Action Party 83人当選(89人立候補) 69.86%
WP = Workers’ Party 6人当選(28人立候補) 39.75%
以下は当選者なし
NSP = National Solidarity Party (12人立候補) 25.27%
SDP = Singapore Democratic Party (11人立候補) 31.23%
RP = Reform Party (11人立候補) 20.60%
SingFirst = Singaporeans First (10人立候補) 21.49%
SPP = Singapore People’s Party (8人立候補) 27.08%
SDA = Singapore Democratic Alliance (6人立候補) 27.11%
PPP = People’s Power Party (4人立候補)23.11%
*Strait Times 9月12日発刊 総選挙特別版より