【三浦コラム】8月に行われたNDR(建国記念日演説)について

 毎年恒例のNational Day Rally(NDR 建国記念日演説)が今年も8月21日に開催されました。これは建国記念日月に毎年リーシェンロン首相が3ヵ国語で国民に広く語りかけるものであります。
 中でも今回は私が注目したいのは2点、1-シンガポールとしてどう中国と向き合うかを国民に語りかけた事、2-来年に控える大統領選挙について語った事です。

 首相自身は、個人的には日本にプライベートでも旅行するなどの日本好きと思われていますが、政治的には中立的な立場を持ちながらも、国際会議などではどちらかというと中国寄りの発言が目立ったような気がします。しかしながら、マレーシアとの領土紛争も絡めて、国際ルール順守を表明するなど、今までの発言からは一歩引いた言動で国民に語りかけた姿が印象的でした。
 また、直接一般の国民に広くこのような政治マタ―を語りかける姿に感銘を覚えたのも事実です。随時国民合意を取り付ける、普通の国民皆に首相の語りかける姿はひじょうに印象に残りました。

miurasep16 大統領選について変更が加えられることを示唆した事も気になった点です。これはあきらかに政府与党が押す現大統領が前回選挙において、かろうじて勝利をおさめた事にも関係するのではないか?と考えられました。
 実際に大統領選挙の制度改正について、Constitutional Commission(憲法委員会)の答申が9月7日に出ましたが(答申を受けた政府の回答は15日に公開)、これらを見ますと答申のすべては実施されませんが候補者資格がかなり厳しくなり、前回健闘した野党系候補たちはその選挙に立候補できないのではないかと危ぶまれます。

・憲法委員会答申 https://www.gov.sg/microsites/elected-presidency/constitutional-commission/the-report

・政府回答 https://www.gov.sg/microsites/elected-presidency/govt-response/the-white-paper

 ただの名誉職だと思われているシンガポールの大統領ですが、国の資金運用の責任者でもあります。資金運用をすべて公開するとうたって前回の選挙で善戦した野党系候補者たちへの狙い撃ちだと思われても否と言えないのではないかと・・・・・・。

 今回は英語での演説中に首相が倒れるという不測の事態が生じました。検査の結果は大事ないとの事ですが、生番組をテレビ等で見ていた国民は、ひやりとしたのではないでしょうか?この事が演説の内容よりもインパクトがあり、首相の後任人事というものも、おおやけに俎上にあがり始めました。
 いみじくも首相が過去から未来へと国民に呼びかけていましたように、現首相の後任が決まるであろうこの数年間は、シンガポールのその先を見据える意味でも重要な時期となる事はまちがいないでしょう。