【三浦コラム】シンガポールの予算発表におけるGST(消費税)値上げについて

来年度の予算発表が2月に財務大臣から行われました。
シンガポールにおける予算発表は、長期的なこの国の方針も含んでの発表がされるもので、見逃せないものです。

発表後にシンガポール人の間でも会話に出てくるのが、GST(General Service Tax)と言われるいわゆる消費税の将来的な引き上げです。

数年前から、「将来を見据えた上での税金の引き上げは避けられない」という言葉も首相からも公的な場であったのは確かです。
しかしながら、今回のようにより具体的な数値として発表されたのは、これが初めてです。
ただ、この発表もGST課税対象外の物を対象に加えるという点以外は、現在7%のGSTを9%に、2021年から2025年までの間に引き上げる、というまだ漠然とした点を残すものでした。

どうも日本の消費税率の上昇経由にも似た面があるようにも感じられます。
ファジーな点をあらかじめ残しておいて、その時の経済状態や与党支持の世論を見極めてのGSTの引き上げになるのではないか?と思われます。
ただ、政策発表翌日からの施行も普通にあり得るシンガポールですので、時を見極めての施行は無理のない発表でしょう。

そういう中、現首相は既におおまかな引退時期を述べている反面、明確な後継者指名が行われていないのも気になります。
ファミリー間でのトラブルがあり、確かに以前に比べると求心力の弱くなっている現首相ですが、では代りはというと・・・・・・。

故リークワンユー元首相、ゴーチョクトン元首相、リーシェンロン首相と国のリーダーが代わりゆく中で、シンガポールの社会も大きな変貌を遂げました。
少子高齢化という一言では済まない大きな社会変化の波がシンガポールにきています。
政府が数値とその方法を公表した増税の目的も、明らかにこれからの高齢化社会によって生じる福祉費用増大に備えるという意味合いもあるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高齢化社会を迎える深刻さについては、シンガポールの出生率の低さも影響しています(下記記事、データーご参照)。
政府はあらゆる手を打っていますが、残念ながら先日の報道によると、2017年の出生率は、1.16というもので、これは過去の統計では、2010年以来に次ぐ低さでした。
数人の子たちが親の面倒を見るというシンガポールでは当たり前であった社会通念が、出生率の低下により、今以上に保てなくなろうことは明らかです。
その社会の変化を補うのが公的な福祉制度であり、その福祉制度が税金により支えられるものだという点は、明らかに日本の現状と似ているのではないでしょうか?

*上記出生率はTFR、合計特殊出生率(total fertility rate)
*シンガポールの出生率は、2014年 (1.25) 2015年 (1.24) 2016年 (1.20)と過去も日本の出生率(2016年 1.44)を下まわる。
(ご参考)
・チャンネルニュースアジアの記事
https://www.channelnewsasia.com/news/singapore/singapore-total-fertility-rate-new-low-1-16-10002558
・時事通信の記事
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_general20170602j-05-w350
・シンガポール政府統計(過去の出生率をグラフで確認)
https://data.gov.sg/dataset/births-and-fertility-annual?resource_id=f63d5535-f094-42d0-b7ff-dbcbccb97928