【三浦コラム】2018年ナショナルデーラリーについて

今年シンガポールは建国53年を迎えました。

建国記念日(8月9日)の後には、毎年NDR(ナショナルデーラリー)というシンガポール首相による国民に向けた演説が行われます。

今年の要点は、大きく3つ

● HDBフラットという政府所有の公団について
● 老齢化世代のヘルスケアについて
● 生活物価の上昇について

 

HDBフラットの99年間の使用権について、今回の演説ではこれを「維持する」との政府の明確な意思表示がありました。

このことは、今後の不動産市場に一定の影響を与えることは間違いありません。

シンガポールの政策の中でも、国民への安定した住宅提供は重要なものです。

大きな流れですが、

● 99年間の使用権で分譲
● 30年経過段階で、最初のグレードアップ工事を行う。
● 60年~70年経過した段階で、2回目のグレードアップ工事もしくは使用権を持つ住民投票により早期の政府への買い取り要請も可能とする。
● 99年の使用権終了後には、政府へ返還

 

このような説明がなされました。

引退した老齢化世代に向けた政策は随時出ていますが、健康サポートに関しての政策が出ました。

これは社会福祉の増加であり、勿論のこと増税による資金の確保を意味するものです。

シンガポールの今度ますます進む老齢化社会を考えると、必要なものだと誰もが理解せざるを得ないことです。

さて、忘れてならないものがあります。

それは、国民の不満が強い生活物価の上昇に給与の上昇が追いついていないというもの、その根底にある貧富の格差への不満です。

生活物価の上昇については、演説では話題としては触れたものの当然ながら「これだ」という有効な解決策は示されず、どう節約するかが個々人の生活にゆだねられた感が強かったのではないでしょうか?

偶然ですが、今シンガポールでも話題になっている映画Crazy Rich Asians(邦題:クレイジーリッチ)は、シンガポールのお金持ち家族を主題に取ったコメディ映画です。

興味深いのは、原作者はシンガポール生まれながら、義務である徴兵に行っていないのが話題になっていることです。

ナショナルデーラリー前にあった前首相の発言(閣僚の高額給与についてのスピーチ)に対しての国民の反感も耳にします。

建国から53年、シンガポールはまだまだ若い国ながら、急速な発展を経験しました。

そういう発展の中、シンガポールの庶民の不平等感は根強いものがあり、政府がどう対処するか?今後の動向が注目されます。