【三浦コラム】シンガポールの汚職取り締まりについて

 先月(6月)に36年間にも渡り長年国外逃亡を続けていた元国会議員がタイ(バンコク)のシンガポール大使館に出頭をした事件が大きく報道されました。1972年から1980年まで国会議員であり、NTUC(National Trades Union Congress)などの要職も務めた有力議員でした。
 シンガポール人の間では、今年3月のリークアンユー元首相の死去に加え、本人自身の老齢による健康問題がその出頭の理由ではないかと言われてもいます。
 汚職に厳しいと言われているシンガポール。
 この件に関してのリーシェンロン首相の「シンガポールは汚職関して容赦はしない」という言葉が、シンガポール政府の汚職に対する姿勢を強く印象付けました。

 シンガポールは汚職に関しては、CPIB(Corrupt Practices Investigation Bureau)という政府機関を独自に保有しており、そこで汚職の取り締まりを行っています。
 近年国民からあまりの高額な給与がその批判の的になってはいますが、80年代からの政府高官の高収入(これは優秀な人材の政治参加という面だけでなく、汚職等の誘惑に負けない様にと言う側面もあるのでは?と思えます)、そして汚職取り締まりの厳しさの両輪を持ってクリーンな社会を形成してきたと言って過言ではないでしょう。

 シンガポールで仕事をする日本人であれば、実感する事ですが、シンガポールでは袖の下という東南アジアでは一般的とも言える賄賂は、その規模の大小に限らず許されません。
 時々新聞報道で見る政府高官の汚職疑惑のみならず、庶民もその対象です。
 身近なところでは、時々新聞でも報道されますが、交通違反をしたドライバーが小銭を渡して見逃してもらおうとすると、その場で現行犯逮捕されます。
 東南アジアで暮らし慣れた方は、時々「お金払えばいいのだろう?」と発言する人もいますが、かえって気をつける必要があるかも知れません。

miura16Jul15 汚職の少ないクリーンな社会、これは外資を取り込み、経済発展の大きな支えになった事は言うまでもないでしょう。
 これは建国の父とも言われる初代首相の故リークワンユー氏が望んだ形でもあったのかも知れません。

 3月のリークワンユー元首相の葬列は、元首相のゆかりの地を巡回する様に国葬のNUS(シンガポール国立大学)に向かいました。
 このCPIB前を通過した事は、元首相が汚職のない国家建築を目指した事の象徴でもあったのだと思えます。

ご参考:
CPIB(Corrupt Practices Investigation Bureau)のウェブサイト
2015年4月のコラム:リークワンユー元首相の国葬について思う事