【三浦コラム】シンガポールにおける日本人や日系企業の存在感について

 長らくシンガポールで生活をしていますと、自分自身この国における日本人や日系企業の存在感がどう捉えられているか気がつかない事があります。
 そういう中、先日以前シンガポールに駐在していたお客様が出張で来られ、色々とお話をしました。そこで話題になった1つは、シンガポールにおける日本人・日系企業の存在感というものでした。

 その方から「日本人の存在感がおちてきているのではないか?」と言われ、2人で諸々とお話をいたしました。

MiuraApr16 まず、日本人が以前ほど目立たなくなったと思うのは、日本人が行くレベルの和食店が以前と比べて格段に増えた事、当地に住む日本人の年齢や趣味の多様化に伴い日本人をシンガポール国内の限られた場所のみで見かけるのが減ったという事(行く場所の分散化)もあろうかと思います。
 近年シンガポールに来られた方には信じられないかも知れませんが、食材を買うならばどこ、和食店に行くならばどこ、週末はここのゴルフ場など、思った以上に数少ない場所に日本人が固まっていたのが一昔前のシンガポールの風景です。
 ここで実際の数字は?と、直近の在住邦人数を見てみると、36,963人(2015年10月段階での大使館発表)であり、これは過去の推移からしても少ない人数ではありません。実際には滞在日本人は上限に達していると言える総数です。
 ただ、それ以上にシンガポールの総人口が増えています(1996年と比べて、2015年は186.4万人の増加)。それによって、全体的に日本人が希薄化したとも言えるかもしれません。
 また、特に若い世代では着ている服装などのファッションセンスも共通化してきていますし、暑いシンガポールは日本人も比較的リラックスした服装で働く人もいる為、ぱっと見では見分けがつかなくなってきています。
*過去20年の在シンガポール邦人数とシンガポールの総人口は当コラムの最後にまとめてみました。そちらも合わせてご参考下さい。

 では日系企業の存在感というところではどうでしょうか?
 改めてオフィスのシンガポール人に聞いて、そう言われれば、そうかな?と思えたのは、身近なところ、その部門からの撤退も含めて日本メーカーの家電販売力の衰退も関係するのではないか?と気がつきました。
 シンガポールの電機製品大手販売店に足を運んでも、特に白物家電やテレビは韓国メーカーに、日系メーカーの製品は場所をゆずっている感は否めません。また、中国ブランドの広がりも見て取れます。
 一般的に人々が感じるブランドの存在感とは、その人々の身近にある製品が示すものなのかとも。勿論の事、車産業ではまだまだ日系企業は一定の位置を保っていますし、一般の消費者に直接目の触れない製品の中にある電子部品などで欠かせない仕事をしている企業も多くあるのも事実です。
 ただ、一時の様な存在感はなくなってしまったのではないか?と問われると、そうかも知れないと思えるのも、また一方の事実です。

 人の肌感覚、直感とも言えるものというものは、馬鹿にできないものです。
 皆様はどうお考えでしょうか?

下記は過去20年の在留邦人の総数(外務省統計より)と外国人を含めたシンガポールの総人口(シンガポール政府統計より 百の桁を四捨五入)。
1996年 25,355人 367.1万人
1997年 26,684人 379.6万人・・・・・・ アジア通貨危機発生
1998年 25,521人 392.7万人
1999年 24,186人 395.9万人
2000年 23,063人 402.8万人
2001年 23,174人 413.8万人
2002年 20,697人 417.6万人 
2003年 21,104人 411.5万人・・・・・・ SARS(新型肺炎)騒動
2004年 21,437人 416.7万人
2005年 24,902人 426.6万人
2006年 26,370人 440.1万人
2007年 25,969人 458.9万人
2008年 23,583人 484.0万人・・・・・・ リーマンショック発生
2009年 23,297人 498.8万人
2010年 24,548人 507.7万人
2011年 26,032人 518.4万人 
2012年 27,525人 531.2万人 
2013年 31,038人 539.9万人
2014年 35,982人 547.0万人 
2015年 36,963人 553.5万人 
在シンガポール邦人数は、ここ20年では、アジア通貨危機後の数年間が減少傾向で、2002年が最小の20,697人となっています。
その後のSARS(新型肺炎)騒動にはあまり影響を受けずに、その後増加に転じるもリーマンショク後の減少。
そして2010年から増加に転じ、特に2012年、2013年の増加が著しく見られます。
*SARS(新型肺炎)騒動時には、統計の元となる在留届をそのままに一時帰国をされた家族などがいらっしゃると思えますが、その数は統計数に減少として入っていない可能性もあります。

20年間で注目すべきは、シンガポールの外国人を含めた総人口の著しい伸びです。1996年と比べて2015年は186.4万人(33.7%)増加しています。