【三浦コラム】東京オリンピック疑惑について、シンガポールからの省察

 シンガポールでは、この1ヶ月はブキバトの補欠選挙(野党候補者が38.79%もの票を取るものの、当補欠選挙に力を入れた与党PAPの勝利)、主要閣僚である財務大臣の突然の入院などが起こり、多少慌ただしくも過ぎました。

 しかしながら、シンガポール絡みで日本を騒がしたのは、東京オリンピック誘致に関して賄賂と疑われるお金がシンガポールのコンサルタントに支払われていたのでは?という疑惑報道でしょう。

miura-c-may16 シンガポールのコンサルタントの会社の所在地が古い公団にあったのも、日本でニュースを見た方々には訝しく思われたのではないでしょうか?
 確かにオリンピック誘致の為のコンサルタント・オフィスが古いHDBフラット(いわゆる公団住宅)にある事は違和感を覚えるのは理解できますが、HDBフラットを事務所として使用するのは、制度にのっとった登録がなされている限り、違法とは言えません(虚偽の申請がされ、それに基づき許可を得ている場合は別)。

 当件、フランスの関係当局からシンガポールの汚職調査取締局CPIB(Corrupt Practices Investigation Bureau)に調査協力の依頼があり、CPIBも調査に乗り出しているとの事ですので、真相はいずれ明らかになろうかと思えます。
 以前コラムで触れましたが、汚職に対して、シンガポールはかなり厳しい姿勢を取っているのは、言うまでもない事です。

 この汚職事件のシンガポールのコンサルタントに関わるポイントは大まかに2つ程あろうかと思えます。

・支払いの内容(取引の内容)に違法性の有無
このお金が何に使用され、その金額に妥当性があったのかなどの精査。

・税務当局に当該金額にあたる申告の虚偽の有無
コンサルタントは個人事業主の様ですので、会社の収入や支出は個人の確定申告で処理をしなければなりません。
該当年の確定申告で、受け取ったお金は収入として、支払ったお金は経費として、漏れなく申告をされているかどうか?いわゆる脱税行為がなかったのか、という確認。
*シンガポールは日本の様な源泉徴収という給与額から所得税を代引きする制度はなく、全ての一定水準以上の収入がある所得者が確定申告の必要があります。

 近年脱税の地にシンガポールが利用されているという批判には敏感なシンガポールです。新規の口座開設など、お金の動きには、銀行もかなり厳正になっています。コンサルタントが銀行口座を通さなかったとは思えず(実際銀行口座に送金との報道も見ました)、その点などは“不自然なお金の動き“として、銀行のチェックがはいらなかったのか?など疑問も残るところです。

 あくまでも、当局の調査結果を待ってみる必要があるでしょう。

コラム:シンガポールの汚職に対しての取り締まり姿勢、を合わせてご参照下さい。
https://www.miura.sg/archives/1214
コラム:ビジネスで住居を使用する際の注意点 を合わせてご参照下さい。
https://www.miura.sg/archives/976