【三浦コラム】シンガポール・マレーシア(クアラルンプール)間、高速鉄道建設について

 去る7月19日、シンガポールとマレーシア両政府間でシンガポール・マレーシア(クアラルンプール)間の高速鉄道建設に関わる覚書(メモランダム)が取り交わされました。2013年2月に両国の首相から公表された高速鉄道建築が、これにより具体化に向けて一歩前進し、あとは正式契約を待つのみとなりました。

今回の覚書の内容は以下です。
・最高速度300km以上
・2016年末までに2国間協定締結(正式契約)
・8駅建設・・・・・・シンガポール1駅、マレーシア7駅
内3駅(シンガポール、イスカンダル・プテリ、クアラルンプール)に関しては、出発駅のみの出入国審査
・高速鉄道の資産を保持管理する1つの資産会社AssetsCo、2つの運営会社を国際入札
運営会社は、OpCoInternatioal(高速鉄道とジョホールバル・シンガポール間のシャトルサービスを運営)とOpCoDomestic(マレーシア国内のオペレーションを運営)
・2016年8月(今月)に技術面をサポートするJoint Development Partner(コンサルティング会社)の入札
・完成は2026年・・・・・・当初の予定(2020年完成)よりも大幅にずれ込み
*詳細はLTA(Land Transport Authority)のウェブサイトこちらをご参照(下記のリンクを付ける)

 シンガポールでは高速鉄道の駅建設の為に、シンガポール西部に位置するジュロン地区のゴルフ場が1つ閉鎖される事が決定しており、ジュロン地区が大きく変貌する事が予想されます。今から建設にかけて、どのように街が変化していくか楽しみでもあります。
miuraaug16シンガポールの金融街を含む一大ビジネス街(写真)はマリーナベイサンズで象徴されるシンガポールの中心地(南側)マリーナ地区付近にあり、ジュロン地区からは離れている。またシンガポールの商業地オーチャードからも離れている為、マレーシアからジュロン地区への駅建設に関しては過去に異論も出ていたが、シンガポール側の提示したジュロン地区で落ち着いた様だ。

 さて、どこの国の高速鉄道が入札でその建設を請け負うのか、そこに注目が集まるところですが、現在日本と中国のいずれかの高速鉄道方式が選ばれる可能性が高いと言われています。
 近年、東南アジアへの中国の経済的影響が強いのは、先日ラオスで行われたアセアン会議の共同声明において、国際裁判所の結果を盛り込めなかった=中国の南シナ海進出に対する非難声明が出し得なかったところにも明らかです。
 高速鉄道の建設予定地の大部分がマレーシア国内にあり、選定には当然ながらマレーシア側の意向に大きく左右される可能性があります。そこにナジブ首相の抱える問題が何かしら影を落とす事もあるのでは?と(それに絡みマレーシアも中国の影響を排除できないとの報道も目にしました)。
 技術だけなく、諸々の要因が複雑に重なり合い、どうそれが国際入札に影響するのか?注目したいところです。

 日本人の私としては、日本の高速鉄道が選ばれる事を期してやみませんが、どの国の高速鉄道が選ばれるのかは、予断を許さない状態です。