【三浦コラム】年金制度(2) / 日本の年金制度

前回、年金制度(1)では、 日本とシンガポールの簡単な対比を行いましたが、今回は日本の公的年金制度について、もう少し詳しく取り上げます。

国民年金と厚生年金

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類。

前回取り上げましたように、これらの日本の公的年金は賦課方式が取られており、現役世代の年金保険料が現在の受給者のために運用されています。

厚生年金の受給額は、現役世代時の収入のように格差がなく(所得代替率*の違い)、所得再分配的要素があります。

こういうことからも、日本の公的年金制度は、皆で支え合う相互扶助的な意味合いの強いものだとも言えるでしょう。

年金には、以下の3つがあります。

  1. 老齢基礎年金/老齢厚生年金・・・・・・65歳からの年金(通常年金と呼ばれることが多い)。
  2. 障害基礎年金/障害厚生年金・・・・・・加入中に病気やけがで一定の障害を負った場合に支給される。
  3. 遺族基礎年金/遺族基礎年金・・・・・・年金受給者や被保険者が亡くなった時、配偶者か原則18歳以下の子が給付を受ける。

ここでは、上記1の老齢基礎年金/老齢厚生年金について、以下述べていきます。

*所得代替率とは、厚生年金を受け取り始める時点(65歳)の年金額が、現役世代の手取り収入額(賞与込)と比べての割合。

国民年金

日本の公的年金制度の基礎(厚生年金を払っている場合には基礎年金と呼ばれる部分)。

国民年金は各自が月々の保険料(一括納付の方法もあり)を納付していく形となり、自営業者や専業主婦(主夫)などが加入しているものです。

平成31年(2019年)4月分からの年金額は780,100円/年(満額 40年間すべて払っている場合 月にすると約6万5千円)の支給実績です。

勿論のこと、これだけでは安定した老後生活と言うには苦しい金額です。

つまり、生活の補助的な要素と考えるべきではないかと思います。

海外で仕事をされている方(住民票を海外転出とされている方)などの任意支払い期間も、受給条件の保険料支払い期間(最低10年間)に加算されますが、実質の保険料納付が行われていない分は、年金受給金額には反映されません。

厚生年金

基礎年金に厚生年金部分が上乗せされているもの。

会社員や公務員が入っている年金であり、基礎年金部分も合わせて、毎月の給与や賞与から天引きされています。

配偶者(第3号被保険者)は保険料支払い義務なく、国民年金を支払っているものとみなされます。

平成27年(2015年)9月以前は、会社員が加入する厚生年金保険制度と公務員などが加入する共済年金制度は別でしたが、平成27年(2015年)10月に、共済年金制度が厚生年金保険制度に統合し、被用者年金制度の一元化が行われました。

現在実施機関がそれぞれ異なります(下記表)。

被保険者の種別 対象者 実施機関
第1号(一般)厚生年金被保険者 民間企業会社員など 日本年金機構
第2号(国共済)厚生年金被保険者 国家公務員(国家公務員共済組合の組合員) 国家公務員共済組合など
第3号(地共済)厚生年金被保険者 地方公務員(地方公務員共済組合の組合員) 地方公務員共済組合(公立学校共済組合)など
第4号(私学共済)厚生年金被保険者 私立学校の教職員(私立学校教職員共済の加入者) 日本私立学校振興・共済事業団

日本から海外へ派遣された駐在員は、日本で支払われる給与から厚生年金保険料が天引きされているのが通常です(海外で事業を起こされた方や海外現地採用の方は、国民年金を継続して払っているケース、カラ期間として支払いを休止しているケースとまちまち)。

被保険者の種別

第1号被保険者 自営業者・学生・無職など 国民年金
第2号被保険者 会社員・公務員など 厚生年金
第3号被保険者 専業主婦(夫が第2号被保険者の場合)*など 国民年金

*厚生年金保険に加入している被保険者(65歳以上70歳未満で老齢または退職を理由とする年金受給権を持つ人は除く)に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者で、年収が130万円未満。

*第3号被保険者・・・・・・昭和60年(1985年)成立、翌年4月施行の改正法により新たに国民年金被保険者となったので、それ以前の個々人の年金納付については要確認。

年金保険料

国民年金・・・・・・国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者の1ヵ月当たりの保険料は16,410円(令和元年度 2019年度 一括などの支払い方法により割引あり)

ただし、第3号被保険者は支払い義務なし

厚生年金・・・・・・給料に対して定率18.3%(半分は所属企業等が負担)

年金保険料金は、標準報酬月額とされる給与金額を1等級(8万8千円)から31等級(62万円)の31等級に分けて、 算出します。

標準報酬月額×保険料率 標準賞与額×保険料率

*厚生年金保険料額表は、日本年金機構の該当ページをご参考ください。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/index.html

*標準賞与額とは、税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てた金額、月複数回の場合には合算し、150万円が上限(年4回以上支給される賞与については、標準報酬月額の対象)。

年金受給額

国民年金(老齢基礎年金)・・・・・・平成31年(2019年)4月分からの年金額は780,100円(満額 40年間すべて払っている場合)

780,100円 X 年金保険料納付済月数 ÷ 480(=40年 X 12月)

*昭和16年(1941年)4月2日以後に生まれた人に適用。

*全額免除などの措置を受けた期間は該当乗率により調整。

厚生年金(老齢厚生年金)・・・・・・定額部分+報酬比例部分+加給年金額から成り立ちます。

定額部分

定額部分 = 1,626円 X 生年月日に応じた率(*) X 被保険者期間の月数

生年月日に応じた率は、日本年金機構の該当ページをご参考ください。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/sonota/20150401-01.html

報酬比例部分

本来水準

平均標準報酬月額 X (生年月日に応じた率) X 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均報酬額 X 生年月日に応じた率 X 平成15年4月以降の被保険者期間の月数

もしくは、

従前額保障・・・・・・従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したもの

平均標準報酬月額 X (生年月日に応じた率 *従前保証の乗率) X 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均報酬額 X 生年月日に応じた率 X 平成15年4月以降の被保険者期間の月数

*昭和13年4月2日以降に生まれた人は、上記に X 0,998

いずれか高い方を採用します。

平均標準報酬月額とは、平成15年(2003年)3月以前の過去の厚生(共済)年金に加入していた期間中の標準報酬月額の平均額

「被保険者であった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者であった期間の月数」で割ったもの。

平均標準報酬額とは、平成15(2003年)年4月以後(総報酬制導入以後の期間)の標準報酬月額と標準賞与額を合算した額。

「被保険者であった期間の標準報酬月額と標準賞与額」を「被保険者であった月数」で割ったもの。

双方ともに、実際の標準報酬月額に再評価率をかけて計算。

加給年金額

厚生年金保険の被保険者期間が20年以上の人が、65歳到達時点(65歳到達後)で、扶養家族(配偶者または子)がいるときに加算(要届出)。

公的年金の3階部分

国民年金(1階部分)、厚生年金(2階部分)と説明されることが多い中、3階部分と呼ばれるものがあります。

企業年金・・・・・・会社によっては、企業年金があり、厚生年金にこの分が加算されます。

年金払い退職給付・・・・・・旧共済年金加入者(国家地方公務員・私立学校の教職員)に設けられているもので、厚生年金にこの分が加算されます。

年金受給年齢

65歳からの受給が基本。

減額を条件とした年金の一部繰上げ受給があります(男女5歳異なる年齢による経過措置含む)。

年金保険料と受給年金額を比較する場合の注意点

年金定期便で将来の年金受取見込み額を確認できます。

自分がこれまでに払った保険料納付額も合わせて記載されていますが、ここには企業が負担している金額は記載されていません。

年金保険料と年金受給金額を比較するためには、注意が必要です。

マクロ経済スライドとは?

賃金・物価の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組(平成16年=2004年の年金制度改正で導入)。

賃金や物価による改定率から、年金保険料を支払う現役世代の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整

スライド調整率=公的年金被保険者数の変動率(2~4年前の平均)X 平均余命の伸び率

賃金や物価がある程度上昇する場合にはそのまま適用、賃金や物価の伸びが少なく・そのまま適用すると年金額が下がってしまう場合には、調整は年金額の伸びがゼロまでにとどめます(年金額の改定はなし)。

平成30年度(2018年度)以降は、「名目額」が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価の範囲内で前年度までの未調整分の調整を行う仕組みとなります。

受給額を増やす方法

受給開始年齢の選択・・・・・・受給年齢を遅らせることで、受給額を増やすことが可能。

増額率 =(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)× 0.007

国民年金の納付期間の延長・・・・・・納付期間を延長することで、受給金額を増やすことが可能。

(条件)
老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと。
20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満であること。
厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと。

付加年金の支払い(国民年金)・・・・・・付加年金を支払うことで、受給金額を増やすことが可能。

国民年金基金への加入・・・・・・国民年金基金への加入・支払いをすることで受給金額を増やすことが可能。

 

さて、日本では将来の不安から、退職金などを利用しての株式投資や不動産投資を行う人もおり、問題も生じております。

老後を踏まえた投資は慎重に、そして若い頃から長期的視野を持って行わなければなりません。

2000万円老後資金が足りないと部分的に取り上げられた金融庁の報告書は、金融機関に国民への投資商品の開発と販売、そして国民の長期視点での投資の必要性が書かれたものでした。

ひとりひとりがその内容を読んで、冷静に考えることで、日本人の投資に対する考え方、そのものを大きく転換する機会だったのではないかと・・・・・・。

さて、日本の公的年金制度の大まかなイメージがつかめたでしょうか?

次回は、シンガポールの年金制度を見てみたいと思います。

日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/index.html

国家公務員共済組合連合会

https://www.kkr.or.jp/

地方公務員共済組合連合会

http://www.chikyoren.or.jp/index.html

日本私立学校振興・共済事業団

https://www.shigaku.go.jp/

国民年金基金

https://npfa.or.jp/