【三浦コラム】扶養家族ビザ(DP)での就労ができなくなることの影響について
既に今年3月掲載の「お知らせ」(https://www.miura.sg/archives/2327)でも書きましたように、5月1日から扶養家族ビザ(DP Dependant’s Pass)での就労ができなくなります。
DPでの就労から就労ビザ取得へ
From 1 May 2021, all dependants of foreigners with a Dependant’s Pass will need an applicable work pass (e.g. EP, S Pass or Work Permit) to work in Singapore instead of an LOC. Dependant’s Pass holders who are business owners may continue running their businesses on an LOC if they meet specified criteria.
https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/dependants-pass/eligibilityシンガポール人材省のウェブサイトより
Dependant’s Passとは、固定月給6,000シンガポールドル以上のEmployment Pass(以下EPを記載) もしくはS Pass(双方就労ビザ)を持つ扶養家族に割り振られたビザのことであり、雇用主がLOC(Letter of Consent)という手続きをすれば、DPでの就労が可能でした。
これはシンガポール特有の制度でしたが、一部の例外を除き、取りやめられる形となります。
新型コロナウイルスの経済難により、(一部を除き)多くの会社が厳しい状況にあり、シンガポール人の雇用を守るためにシンガポール政府も色々な手をうっているのは確かです。
何かといえば、外国人がシンガポール人の雇用を奪っているのでないか?と言われることもありますが、DPの就労に関しては、シンガポール人がその仕事を代替わりする性格のものでもないと考えられます。
今回の措置は、どちらかと言えば、不平等感を抱える国民に注目されるアドバルーンをあげた感も否めません。
ちなみに下記の資料によると、ここ数年増加傾向にあったEPとS Passの人口推移は新型コロナ禍以降減少に転じています。
https://www.mom.gov.sg/documents-and-publications/foreign-workforce-numbers
EP・・・・・・193,700人(2019年12月)→ 177,100人(2020年12月)
S Pass・・・・・・200,000(2019年12月)→174,000人(2020年12月)シンガポール人材省のウェブサイトより
シンガポール日本人社会への影響
さて、肝心のシンガポール在住日本人への影響ですが、2つの側面から見ることできます。
1-夫婦共働きの夫婦
駐在員家庭でも、派遣元会社の許可を得て働いているDPの方がいらっしゃいます。
この場合は収入面ではなく、ご自身の仕事のキャリアを断絶しないため、また新たな仕事にチャレンジしたいための就労が主だと考えられます。
新たにEPやS Pass取得は、派遣元会社の許可等を考えるとよりハードルが高いものになろうかと思えます。
現地採用家庭では、DPで働いている方に企業がEPもしくはS Pass基準の給与を保証できるか?が焦点になるでしょう。
フルタイムで働いている方は、DPから就労ビザへの切り替えの可能性もありますが、パートタイムで働いている方の就労は完全に閉ざされます。
2-企業サイドの事情
DPの方を雇用している企業には、様々な理由があります。
単純に雇用の理由が、日本人でないと対応できないという理由の場合は、必要不可欠であれば、就労ビザへの切り替えの方向を取ると思えます。
ただ、少しでもコスト面から日本人のDPの方を雇用している理由があれば、就労ビザ取得は難しいのが現実です。
就労ビザ取得は、年々困難になっていますが、主な理由は月給額です。
就労ビザ取得に定められている最低賃金のみでは、十分でないケースがほとんどです。
こういう事情により、DPに頼って経営をしていた会社は、場合によっては閉めざるを得ない状況もあろうかと思えます。
DPの就労不可は、シンガポール社会全体には、何ら影響はないものの、シンガポールに住む日本人社会には少なからず何かしらの反響を起こすものであったというのが現実でしょう。
在住日本人の数も減少に転じているという噂もあるほどに、最近ご帰国の方が多かったようです。
今後を見守りたいと考えております。