【三浦コラム】シンガポールにおける会社清算と個人として気をつける事について

 シンガポールでは容易に会社を設立できると言われております。しかしながら、会社というものは常に競争にさらされています。生存競争は厳しく、そのすべてが生き抜いていけるわけではありません。場合によっては、意に反し、会社を清算しなければならない事もあるでしょう。
 皆さんに意外と知られていないのは、シンガポールでの会社清算についてです。

 今回はその事を取り上げるとともに、シンガポールに住む者として気をつけなければならない事も合わせて記したいと思います。

 会社には大きく分けて支店と株式会社(PTE LTD)があります。前者は設立に手がかかりますが清算は比較的簡単です。大抵の場合、届け出を行い1年で清算可能です。反面、後者は手がかかります。
 株式会社(PTE LTD)の清算方法は、1=株主による、または 2=債権者による任意清算、3=裁判所の命令による強制清算に分かれます。ちなみに過去に私が取り扱った案件では、大方が上記1に該当する案件でした。

miuranov 1は会社の株主が主体となって会社を清算する事であり、2は債権を持っている債権者が主体となって会社を清算する事です。
 1と2、双方大きな流れは下記です(ただし2の場合は、清算後の資産を債権者がその債権の配分応じ受け取ります。3はちょっと特殊なケースですので今回は省きます。)。

 清算までには色々とやる事はありますが、債務が回収できる債権と資産に対して過剰でない事が重要です。親会社など他社への債務がある場合などは、債務の返済もしくは債権放棄してもらうなどの債務を解消する手続きを取らねばなりません。
 それらの業務は、通常は会計会社の会計士を清算人としてアポイントし、小切手やサイン権を渡し、取り行います(もちろんのこと、その費用も念頭に入れねばなりません)。
 清算期間は、半年単位で税務申告を行い、早ければ1年以内、遅くとも1年と数カ月で会社の清算が終了します。

 会社を設立し、動かしていない段階で清算する事になった場合には、Strinking Offという形になり、2~3ヶ月で清算が終了します(登録抹消)。

 シンガポールに住む皆さんが特に注意する事は、レジデント・ダイレクター(居住役員)への就任です。
 会社を設立する為に会社の役員になって欲しいと友人や知人に頼まれた事のある人も少なくはないでしょう。実際、ノミニー・ダイレクターという通称があるくらいに、それを引き受ける人もシンガポール人を含み多いようです。

 どのくらいその会社についてご存知でしょうか?事業計画は妥当ですか?

 登記に自分の名前が載る事は、一定のリスクを引き受ける事に他なりません。

 会社が立ちいかなくなる時には、多額の負債が生じていることが少なくありません。他の役員が逃げた場合には、レジデント・ダイレクター(居住役員)はその責のいっさいを求められる事もあります。場合によっては、会社は清算できない、かつ会社の登録費用はいつまでも個人に請求が来ると言う最悪の事態も起こり得ます。

 よって、くれぐれもご自身が関わりのない会社の役員へ名を連ねる事は、ご注意される事をお勧めいたします。