【三浦コラム】シンガポールへの家族移住について考える
最近は日本のマスコミでもシンガポールへの注目度が高まったせいか、弊社へもシンガポールへの移住を考えているというお問い合わせも増えてきました。
今回はシンガポールの実情も踏まえて、日本人家族がシンガポールに移り住む前に考慮に入れるべき要因について考えてみます。
まず、海外生活をした事のない方の念頭にないのが、ビザ取得です。
当然のことながら、シンガポールで滞在する為にはビザが必要です(この事は非常に大切ですので、ビザ取得の条件確認はおろそかにすることなしに、正確な現在の情報を入手するようにしましょう)。
ビザの取得の為には、一般にはシンガポールで起業されるのか、現地採用として働かれるのか、いずれかの選択になると思えます。起業の場合、会社の設立・登記は簡単ながらも、その会社の社員として自分のビザが出るのか否か、また会社自体が事業を継続維持運営できるのか。現地採用の場合、家族を養える給与が得る事が出来るのか否か、また最近厳しくなったビザ取得要件に自分の労働価値が見合うのか否か。
あくまでもビザの発給は、ご本人のスキルと会社の規模やポジションを踏まえ、シンガポール政府MOM(人材省)がその可否を判断します。言い換えれば、要件を満たさない人には、住むこと自体を認められないという現実。これをあらかじめ知らねばなりません(現状は現地採用であれば、特殊な職以外は4大卒を求められる事が多い様です)。
さて、ご家族に子供がいる場合には、その教育をどうするかが問題となってきます。
シンガポールでは、日本での義務教育期間でも教育費はかかります。ちなみにシンガポールの日本人学校は日本人会に入会の必要があり、入学時にはまとまった支払いが求められます。日本人学校のホームページも合わせて参考にしてみましょう。
子供の将来を考えてシンガポールにというお話も時々聞きますが、大学進学までを考慮に入れた教育計画なのか否か?日本人として、日本語の習得をどうするかなどの問題もあります。週末にある日本語補習校も希望者全員が入れないのが現実です。
因みに地元の学校は、シンガポール人優先・次にPR(永住権)保持者・最後に外国人という順です。もし入学できるとしても、教育カリキュラム自体が日本と異なりますので、調査・準備なくしての入学はお勧めできません。
シンガポールの物価を考慮する事も重要です。
この国が東南アジアという事で、物価が安いと勘違いされている方がいらっしゃいます。
例えば、ご家族での滞在ですと、ユニットの賃貸が通常でしょう。コンドミニアムと比べ、賃料の安いHDBフラットという公団も賃貸に出ていますが(賃貸に出すには、オーナーは一定の手続きを経なければならない為、不法に貸している物件には注意)、それでも現在ですと月2,000ドル(約13万円)程度の賃料になっています。
割安だと言えるホーカーセンター(屋台街)での食事も毎日となると日本人には抵抗があるでしょう。日本食レストランは安くはありませんし、また日本食の食材なども割高です。
他にも医療費なども特に持病がある方は注意が必要です。
諸々考慮に入れて、ご家族が生活に必要な金額を出してみましょう。そして、数年後のご家族の姿を思い描いてはいかがでしょうか?日本へ帰るのか、そのままシンガポールに滞在されるのかによっても、おのずと違った姿となるでしょう。
また将来、子供が巣立った後の夫婦の生活の基盤をどこにおくかも考えてみましょう。日本へ帰る気があるのであれば、年金の積立も考慮に入れるべきかもしれません(シンガポールにもCPFという年金積立制度がありますが、PR(永住権)保持者からの権利・義務となります)。
独身や単身の方が住むのと違い、扶養する家族がいる一家での移住には、考えるべき事が色々とあります。他人の情報を鵜呑みにすることなしに、ご自身で調査された肯定的な要素と否定的な要素を秤にかけて、立ち止まって、熟慮してみましょう。
(注)今回は肯定的な要素は色々と多く伝わっていると思われる為に、あえて否定的要素を書きだしてみました。
過去のコラムも合わせてご参考ください。ただし、各コラムは書かれた時期により、2012年5月現在と状況が変わっている可能性があります。
・子供の言語教育について
・生活費について
・住居について
・シンガポールでの起業について
・CPFについて
・起業家ビザについて