【三浦コラム】シンガポールのマナーから考える異なる視点

日本人の私達が見るシンガポールの公共マナーは、時々首をかしげる事もあります。文化と言うバックボーンが異なるので、それがどういう意味なのかなど、細かい点をあげると混乱します。
ここでは比較的新しい、あまり文化に関係ないだろう電車内のマナーについて触れてみたいと思います。

駅のエスカレーターで急ぐ人の為に片側を空けると言う事は、シンガポールでも最近は定着しつつあります。この国では階段を使う人が少ないので、急いでいる人にも賛同でき易い行動だったのかもしれません。
その反面、降りる人を待っての乗車はなかなか定着しません。電車を降りる時に戸惑った日本人も多いのではないでしょうか。
この2つなどは駅構内にポスターを貼るなどして、オペレーション会社であるSMRT、SBTransitなどは公共マナーとして後押しもしていました。
シンガポールの社会は、その法律の厳しさとは別に、比較的おおらかなところがあります。そういうことから、必然性が低いものはなかなか変わりにくいのかもしれません。

 先日シンガポールでとある論争がありました。
優先席に座った若い女性が、目の前に立つお婆さんに席を譲らなかったという事の是非。
実際は途中で席を譲った若い女性の写真をお婆さんが携帯電話で撮って・・・・・・。写真を撮られた若い女性と、席をなかなか譲ってもらわなかったお婆さんが、電車の中で大喧嘩をしたそうです。
どっちが悪いかで両者の賛同者に分かれて論争が続いているとの事。

例外はあるものの、シンガポールの公共交通機関では老人や妊婦、そして赤ん坊を抱えている人に席を譲る姿を頻繁に目にします。
この社会的な拘束力は、どうも感覚では日本人より強い様です。

先日、日本旅行から帰って来たシンガポール人が、日本人は冷たい、マナーが・・・・・・と言うので聞くと、同行した赤ん坊を連れた若い夫婦に誰も席を譲ってくれなかったとの事。それも電車に乗るたびに全てがそうだったと。
赤ん坊を抱える女性に席を譲らないとはシンガポールでは考えられないと大憤慨していました。
状況もあると思えますし、皆がそうではないとはわかるものの、逆から見ると違う見方ができるのだなと思えました。

海外で生活するとどうしても自分の育った環境で物事を判断しがちですが、違った角度から見る努力も必要だと感じた次第です。
これは、一般の生活だけにとどまらず、仕事の面でも言えるでしょう。海外では、異なる視点から自らの行動を見直す事も重要かもしれません。