【三浦コラム】シンガポールの会社制度、設立におけるビザ発給の注意点

 当コラムの第一回目は、シンガポールの会社制度と設立におけるビザ取得の注意点について、最近の変化を踏まえておおまかに考察してみましょう。

 シンガポールでの会社設立にはいくつかの種類がありますが、社名の後ろにPTE LTDと表現される株式会社、その業を行う個人が事業主となる方法(個人事業主)、そしてパートナーシップなどです(実際はもう少し細かいのですが、詳細は省略)。私達が日頃目にする一般的な現地法人はたいていが株式会社(PTE LTD)の形を取っています(シンガポールへの進出では支店、駐在員事務所などもありますが、支店はその活動が本社の定款や本国の税法に拘束を受け、また駐在員事務所は情報収集という建前上、営業活動ができないなどの制約を受けることになります)。

 miurasingapore=officeビジネスネーム登録を行い、業務を開始する個人事業主(税は個人の所得税として確定申告 シンガポール人と一部の外国人はこの形態を取っています)、弁護士事務所や会計事務所などにみられるパートナーシップという形態(個人事業者の連合体として各パートナーは無限責任)は海外からシンガポールへの進出を考えるに一般的ではなく、大方の進出企業は株式会社(PTE LTD)という形態を取ります。

 さて、株式会社設立、ここでひとつ気をつけねばならないことは、数年前に海外からのベンチャー助成の元に設けられた起業家ビザ(アントレパス)という制度です(会社設立とビザの取得は外国で働く日本人にとって切り離せないものです)。
 シンガポールは海外からの投資奨励、ベンチャー育成という方針の元で世界でも低率の17%(2009年会計年度)という法人税を掲げ、企業の誘致・設立を奨励してきました。その中で注目を浴びたのが、起業家ビザという制度でした。
 しかしながら、昨年10月からの景気の冷え込みと雇用の悪化によりシンガポール人の雇用の安定に視点が移ってきたようです。当制度にもその影響が出てきたのでは考えられる変化がありました。

 起業家ビザは、09年9月28日より
・株式会社の設立が前提となった。
・当該ビザ申請者は設立の会社の30%以上の株主でないとならない。
・最低払込資本金は50,000ドル以上でないとならない。
・当該ビジネスがシンガポール人の雇用を促進するものでないとならない。
・2年後の更新時には雇用者数やその間に使用した費用の裏書きなどが必要。
以前の内容と比べて、実際よりハードルが高いものとなりました。

 今後のシンガポールの会社設立には、従来からのシンガポール居住者を取締役(設立者)とした株式会社が再び一般的な方法となるでしょう。ここで注意する点は、会社設立・登録に関する政府機関ACRAと外国人のビザ発行の政府機関MOMが別組織であること。つまり、会社設立後の赴任者のビザが、シンガポールが必要な人材であると認められない限りには発給されない可能性も残されているということでしょう。