【三浦コラム】シンガポールにおける日本企業の拠点の動向について

シンガポールでの外国人就労ビザ取得のハードルが高くなるという発表のあと、3月に興味深い資料がジェトロから発表されました。

2023年度 アジア大洋州地域における日系企業の地域統括機能調査報告書(PDF)
20230043_01.pdf (jetro.go.jp)
ジェトロ・シンガポール、バンコク、クアラルンプール、ニューデリーが、2023年10月から11月にかけて、各地に進出する日系企業を対象に地域統括機能に関するアンケート調査を実施した内容をまとめたものです。

多くの日系企業の拠点があるシンガポールについては、下記のように総括されています。

  • 地域統括拠点集積地としてのシンガポールの地位は変わらず
  • 営業強化に伴うタイへの移管など、機能配置の見直しが加速

実際に政情が安定しており、汚職が日常にはないクリーンな経済環境、整ったインフラ整備、交通や物流拠点であることの土地の利などを持つシンガポール。
この地区では圧倒的多数の日本企業の拠点機能を持つシンガポールですが、諸々の環境の変化により、その位置づけは今後多少変わっていくことは避けられない模様。

円安も伴って、各国ともに運営コストが上昇となる中、特に中でもシンガポールではその傾向が顕著に見られます(駐在員の最低月給による就労ビザ取得問題も、根本的な問題は赴任者の給与の問題であり、人件費であると言えるでしょう)。

マイナス面も目に付くようになったシンガポールではありますが、その反面、すべて取って代わる拠点となる国もないのも現実です。

ジェトロのレポートは、多方面からまとめあげた興味深く有効なデータとして読むことができます。
拠点設立等に関係ない方でも、シンガポールで働く方はこの国の位置づけを再確認される意味でも、ご一読されることをお勧めいたします。

勿論のこと、既に海外で働いたことのある皆さんであればご存じのように、これがすべてではありません。
実際には陰に隠れた、こういうデータには出てこない、公にはしたくない・しない拠点設立・運営失敗のケースも諸々あるのも現実です。

拠点設立・移転をご計画の企業は、他者が作成したレポートのみを鵜呑みすることなく自社独自でも、現地に足を運んでの調査が必要でしょう。
その国々特有の法や文化、国民性を把握の上、総合的に長期的視点を持ち、将来を見据えて熟慮・ご検討されてることが大事だと思えます。

空港のインフラも整ったシンガポール