【三浦コラム】CPF制度の変更(2024年予算発表において)

2024年の予算発表では、多くのシンガポール国民への補助関連項目が発表されました。

シンガポールに住む日本人にとって、敢えて関連があると言えるのはCPF制度の変更部分ではないか?と思えます。

CPFとは、Central Provident Fundの略であり、日本語では中央積立基金と訳されたりもします。
シンガポールは、この組織において、各自の給与金額に基づき、一定金額(雇用主と雇用者双方から捻出)を積み立て、年金・医療・住宅購入金などに利用される制度を採用しています。

Central Provident Fund Board (CPFB)

実際、2023年10月段階の外務省統計では、31,366人の在シンガポール邦人中、14.6%の4,593人もの永住者がいると明記されています。

海外在留邦人数調査統計|外務省 (mofa.go.jp)

大人はこの数がすべてではありませんが、それにしても意外にも多くの在シンガポール邦人が永住権を持ち、住んでいることに驚かれる方もいることでしょう。

当然ながら各自CPF口座を持ち、会社等で働いている方は月々定められた金額がその口座に積み立てられています。

今回の変更点(永住権保持者も対象となるもの)で注目したいのは、55歳以降の2点です。

2025年よりSA(Special Account)が無くなること(対象は55歳以上)

現状は、OA(Ordinary Account)、SA(Special Account)、Medisave Account(MA)。
55歳からは、上記に加えてRA(Retirement Account)があります。

55歳からは、このSA部分がなくなります。

CPFライフのERS(Enhanced Retirement Sum)の引き上げ

現状は、BRS(Basic Retirement Sum)の最大3倍がERSとしてRAに積み立て可能です。

年金としての支払い金額を増やすために、4倍までの積み立てを可能となります(ちなみに一般的に目標とされてあるFRS=Full Retirement Sumは、BRSの2倍)。
これにより65歳から現在は最大年金額約2,500ドルを約3,300ドルへと引き上げることが可能との試算になります。

シンガポール政府は、物価上昇などを鑑みて、積み立てできる国民には更なる年金部分の拡充を図りたいと切に考えていることが、今回の年金部分の制度変更にも読み取れます。

残念ながら、去年の制度変更で永住権を返却すると(失効すると)、CPF口座も閉じなければならないこととなりました。

CPFB | Closure of CPF Accounts for Non-Singapore Citizens and Non-Permanent Residents

しかしながら、永住権を持つ日本人の多くは日本での企業の籍がない方(日本の厚生年金の未加入者)だと思えます。そうなると老後、海外在住者は任意の(日本の)国民年金と自分で参加する民間の年金に頼ることとなります。
自分のお金として確保できるCPF口座の積立金は、将来もシンガポールに住み続ける方には年金として、帰国する人(せざるを得ない人)には高利の貯蓄として帰国時に引き下ろせるものとして確保できます。

永住権を持つ方は、折に触れてシンガポールの年金制度の現在(変更修正も多いため)について、随時確認していくことをお勧めいたします。

予算に合わせて、CPF制度も色々と細々発表がありました。
ご興味のある方は、下記を合わせてご一読ください。
https://www.cpf.gov.sg/member/infohub/news/cpf-related-announcements/budget-highlights-2024

2019年段階にCPFの年金制度をまとめたコラムがあります。
既に変更された点もありますが、こちらも合わせてご参考にしてください。
https://www.miura.sg/archives/1884