【三浦コラム】本当にシンガポールは物価が高いのか?
先日、ある日系新聞の記事で取り上げられたスーパーマーケットでのポテチップス(4.5シンガポールドル)とビール500mlの価格(8シンガポールドル)ですが、実際どこで何を見て書かれているのか?と首をかしげてしまいました。
記事本文を読むに、多分に「物価の高い国、シンガポール」と話をスタートする為に、書かれた数字ではないかと訝しくも思えました。
記事にはシンガポールのスーパーマーケットと書かれてありました。
シンガポールに住む方でしたら、どこのスーパーマーケットだろうと疑問に思われるはずです。何故ならば、実はシンガポールのスーパーマーケットでは、承知の事実の如く、同一商品が別料金で売られているからです。
シンガポールのスーパーマーケットの種類
シンガポールにはスーパーマーケットが、Fair Price(フェア・プライス) Giant(ジャイアント) Cold Storage(コールド・ストレージ) Market Place(マーケット・プレイス) Meidi-ya(明治屋) Isetan(伊勢丹)など、複数のブランドがあります。
同じ商品でもスーパーマーケットによって価格が異なるのも普通に受け入れられています。
日本人が現地物価の安い東南アジアとしてシンガポールを考えると、それは誤りだと言えますが、まずはシンガポールのスーパーマーケットでの正確な数字をおさえておきたいものです。
では、多くの国民が利用しているところはどのスーパーマーケットか?それは政府系スーパーのフェア・プライスです。
こ こでは、多くのシンガポール国民が常日頃買い物に訪れる政府系スーパーのフェア・プライスの価格を見てみましょう。
ポテトチップス
カルビーのポテトチップス80gが1.50シンガポールドル 180gが2.95ドル(1シンガポールドルが80円ベースでそれぞれ約120円と約236円)。
一般的な売れ筋商品はこちらになります。
他方、高級志向(ポテトチップスにその様な考えがあればですが)のポテトチップス。
米国やオーストラリアなどからの輸入品~例えば、Lay’s 184.2g 4.45シンガポールドル や RED ROCK DELI 165g 5.25シンガポールドル などがあり、敢えて言えば記事で参照されているのはこちらが該当します。
ビール
シンガポールの代表的な国内生産ビール。当地ブランドのタイガー・ビールは500mlで4.40ドル。アンカー・ビールは3.10シンガポールドル(約352円と約248円)。
訪れたフェア・プライスでは、記事で書かれてある様な1本(500ml)8シンガポールドルの商品はありませんでした(アルコール度数の高いビールが一番高くて、7.20シンガポールドル)。
ちなみにランダムに拾ってきたスーパーでの価格をご参照下さい。
卵10パック 安いのは1.6シンガポールドル(約128円)から
牛乳 明治830ml 2.3シンガポールドル(約184円) 他ブランド1L3.05シンガポールドル(約244円)
紙おむつ(花王メリーズ 日本からの輸入品と思われるパッケージ) パンツタイプXL24 16.95シンガポールドル(1,356円)・・・・・・これより安価なものもある。
洗剤(アタック)3.0kg 12.50シンガポールドル(約1,000円) 1.6kg 7.5シンガポールドル(約600円)
液体洗剤(アタック)4.0kg 12.80シンガポールドル(約1,024円)
ママレモン 750ml 2.80シンガポールドル(約224円) 抗菌タイプ750ml 3.20シンガポールドル(約256円)
コカ・コーラ 330ml 0.75シンガポールドル(約60円)。
*上記価格は定価(実際の販売単価は特価で売られている事も多い)
*価格は全て税込み価格(消費税GST7%を含む)
*換算率は判り易い様に、1シンガポールドル80円で換算しました。
日々の生活物価が多少なりとも想像できましたでしょうか?安く思えるものも、高く思えるものもあるのではないでしょうか?
勿論の事、あきらかに日本よりも明らかに高価なものがあるのは否定できません。
・車 自動車を持つ権利COEを含む
*COEとは、Certificate of Entitlementの略で、1990年に自動車の総量を抑える為に導入された自動車所有権証。
https://www.lta.gov.sg/content/ltaweb/en/roads-and-motoring/owning-a-vehicle/vehicle-quota-system/certificate-of-entitlement-coe.html
・外食費(レストラン)
・不動産
交通手段
車が高いのはこの国の政策も関係するのですが、反面シンガポールでは安全かつ安価な公共交通機関が充実しています。特に電車網の整備などは急ピッチで進んでいます。
公共交通機関の料金の価格はどうなのか、実例を挙げてみましょう。
電車(MRT Mass Rapid Transport)は、SMRTとSBS Transitという会社が運行。電車とバスの料金は距離に比例しての価格となります。
日本のSuicaにあたるカード(ezlink card)での場合0.79ドル(約63円)から、現金での場合1.40ドル(約112円)からとなります。
タクシーは、基本料金3.60ドル(約288円)から(SMRTの場合)
時間帯やタクシーを拾う場所などによって加算料金はあるものの、日本と比べればかなり安価。
下記の料金表ご参照(SMRTのウェブサイト)
https://www.smrt.com.sg/Journey-with-Us/Fares-Claims#TrainFares
外食費
外食費については、レストランの食事は高いと感じざるを得ません。
ただ、これは私を含む日本人が日本からの輸入食材を使用する和食等を主に食べているからかも知れません。
地元の人で賑わうホーカーセンター(屋台街)やフードコートなどに行けば、安いところで3~4シンガポールドル(約240円~320円)からと、それなりの安い食事を食べる事も可能です。
不動産
不動産は、日本人の感覚からするとびっくりするくらいの価格です。土地付きの家は日本円にして数億円、コンドミニアムなどは日本円にして1億円くらいからの価格となります。
日本人を含めた先進国からの駐在の外国人が住むのは、このコンドミニアムになるのが主です。その為、家賃も安くとも1ヶ月3000シンガポールドル(24万円)からという高額となります。
では、シンガポール人はこの価格の住宅を購入して住んでいるのでしょうか?
確かにある一定の人達は、かなり高額のコンドミニアムなどを購入して住んでいます。
しかしながら、持ち家率が90%であり、80%もの国民がより安価なHDBフラットとよばれる公団住宅に住んでいます(国民のみが新築のHDBフラットを購入可能。実際は99年の占有権)。
*参考統計資料 http://www.singstat.gov.sg/statistics/latest-data#22
シンガポール人がコンドミニアムなどを複数持つのは、値上がりを待っての転売でのキャピタルゲインを得る目的が大きいのも知られる事実です(利回りを考えると賃貸ししているメリットは少ない為)。
全体的には、不動産価格やオフィスの賃料の多少の下落などは見られますが、まだまだこの国ではデフレ感といったものは一般生活の場では感じません。しかしながら、庶民は公共交通機関を利用してオフィスに通い、より安く買える場所で日々の生活に使用する商品を購入しているのが事実です。
その国の一部を見て、判断するのではなく、生活物価という身の回りにも目を見張り確認をしてもらいたいところです。
生活するのに物価が高い都市としてシンガポールが紹介されますが、誰がどういう環境で生活した場合どうなのかなど、その内容を精査する必要がある様に思えます。
最後にシンガポールの消費税(GST)は現在7%です。
では、所得税は?となると、最大22%(控除項目を差し引いた後の年収320,000シンガポールドル=約2560万円以上)となります。
*所得税率について https://www.iras.gov.sg/irashome/Individuals/Locals/Working-Out-Your-Taxes/Income-Tax-Rates/
物価に関しては、単純に高い安いと決めつけずに、詳細を精査してみたいものです。
消費者物価の統計資料も合わせてご参考にして下さい。