在留邦人数と日系企業で働く現地スタッフへの処遇

2023年の在留日本人数、外務省統計が先日発表されました。

今までは10月の邦人数が年度を越えて公表されていたため、「日本人の異動が多い3月・4月を経ての数字には正確性が乏しい」という声も複数聞かれました。
しかしながら、今回は同年の12月に出たため、そのような意見もなく、比較的正確な数字を知ることができると言われています。
特にシンガポールは、在留届を出している人が多く、この統計の数字は正確なところを捉えていると考えられます。

在留邦人数の推移

数字を見てみると、昨年と比べると減少はしたものの、シンガポールに住む日本人が体感するほどには、大幅な減少はなかったというのが、当地の日本人同士の感想です。

具体的に2010年からの具体的な推移を見てみましょう。

2023年 31,366 (-4.2%)・・・・・就労ビザ新ルール開始(9月のため、影響なし)
2022年 32,743( -9.5% )・・・・・・パンデミック後の規制緩和開始
2021年 36,200( -1.1%)
2020年 36,585( -0.6%)・・・・・・コロナパンデミック開始
2019年 36,797( +0.5%)
2018年 36,624 (+0.6% )
2017年  36,423( -2.9%)
2016年 37,504( +1.5%)・・・・・・邦人数のピーク
2015年 36,963 (+2.7%)
2014年  35,982( +15.9%)
2013年  31,038 (+12.8%)
2012年  27,525(+5.7%)
2011年 26,032(+6.1%)・・・・・・東日本大震災
2010年 24,548(+5.4%)

在留邦人の数字だけ見ると、2010年からの過去の推移を鑑みるに、2023年の邦人数は10年前に戻っています。

興味深いのは、コロナパンデミックにより世界的にも移動が制限された2020年・2021年を経て、規制緩和と共に減少率が過去最高となっていること。
これは周囲にも話を聞くことの多かった駐在員の帰任(入れ替え)延期が解除されて、移動の容易になったこの時期に人事異動が行われたことであろうと思えます。

在留邦人数の減少は駐在員の減少にほかならず、それはコロナパンデミックにより企業のリモートワークの可能性が高まり充実したことも、現地シンガポールに駐在員のいる必要のない仕事が選別されたのだろうと考えられます。

日系企業のこれからと在留邦人数

これからどうなるかは、今後の世界・日本経済と日系企業(シンガポール在住日本人の多くは日本企業で働いていること)の企業戦略によるものだと思えます。

ただ、海外に進出している日本企業でのシンガポールの拠点的な重要性は変わらず、東南アジアでは取って代わる国はないという現状は、しばらくは変わる要素も見当たりません。

そういう中、現地スタッフの要員不足が言われています。
円安も伴って、日系企業の現地雇用が地場企業や他国から進出している外国企業に完全に競り負けているという現実がその原因のひとつです。

先日は日本のテレビニュースなどでもタイ現地の日系企業が優秀なスタッフの確保で苦しんでいる姿が取り上げられていました。
実はこれはタイだけに限らず、シンガポールも同様の傾向があり、やはり給与額/役職などの問題で、現地法人として雇用したくとも、日本本社に理解されずに、雇用できる人材の確保ができないという現実にぶつかっています。
今後日系企業がさらなる国際化を図るためには、乗り越えていかねばならない問題・意識改革であるように思えます。

  • 給与額の設定を日本での同職の給与額と切り離し設定すること
  • 日本人以外のスタッフにも能力次第で上のポジションの可能性を開くこと

など、やりべきことは諸々あろうかと思えますが、それは奇しくも在留邦人数の更なる減少に拍車をかけることになるのかも知れません。

海外在留邦人数調査統計
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/index.html