【三浦コラム】シンガポールのコロナウイルス対策と現状 5月中旬現在

シンガポールのコロナウイルス対策と現状について日本のニュース(テレビ)でも広く報道されるようになりました。報道の中で焦点があてられたのは、シンガポールの対策には、外国人ワーカーという盲点があったとのこと。

外国人ワーカーについては、シンガポールの経済構造に深く根差した問題ですので、表層だけで論じられるのは疑問ですが、報道内容の一面は頷かざるを得ないところもあります。
それは密を避けるという面で、「結果的に後手に回ってしまったこと」でしょう。

6月1日までが実質のセミロックダウンとも称される「サーキットブレーカー期間」となる中、まずはここでシンガポールの状況を確認しましょう。

5月10日12時までの患者数は、総数23,336人

入院中:1,097人 内22人が集中治療室
公的機関での隔離中:19,498人
死者数:20人
隔離者を含む退院数:2,721人

5月11日12時までの患者数は、総数23,787人

入院中:1,093人 内24人は集中治療室
公機関での隔離中:19,448人
死者数:21人
隔離者を含む退院者数:3,225人

*保健省ウェブサイト https://www.moh.gov.sg/covid-19 より

*5月11日は新規患者数が486人と激減していますが、下記に明記されていますようにテスト総数が少ないためです。

https://www.moh.gov.sg/news-highlights/details/486-new-cases-of-covid-19-infection
2. The lower number of cases today is partly due to fewer tests being processed at a testing laboratory as it is recalibrating its apparatus for one of the test kits.

下記は、5月10日データーから

1-シンガポールの患者数を見ますと、5月10日の新規患者数876人中、外国人ワーカーと言われる人たちの数がその大部分であること(860人寮滞在、11人寮以外の滞在)

2-死者数が20人と患者数に対して0.086%とひじょうに少ないこと
*5月11日に死者が21人となりましたが、それでも患者数に対する死者数は0.88%です。

この2つが特徴です。

日本でも報道されていますように、外国人ワーカーが住む寮は感染が広がりやすい環境にあったというのは、事実であり、的確な指摘です。今後どう改善していくか?これからのシンガポール社会が負うべき問題だと考えます。

ただ、単純に「シンガポールの虐げられた外国人ワーカーの悲劇だ」という方向性で伝わるのは、少し疑問があります。

通常外国人ワーカーと言われる肉体労働を担う外国人は、希望してシンガポールに出稼ぎに来ている方々で、騙されて連れてこられたわけではありません(雇用企業にも明確な雇用義務が課されています)。あいまいな立場で外国人ワーカーを人手不足の職場に送り込む日本と比べれば、立場が明確に可視化しているだけではないかと思えます。

シンガポールでは手順に基づき広範囲に検査が行われており、陽性患者の皆に的確な措置が取られています(入院費用は外国人も含めて政府負担)。

*特に患者数の大多数を占める寮に入っている外国人ワーカーは、建築業に携わる人たちで若く体力があるという面も、患者数が多いわりに死者数が少ない理由かも知れません。

 

さて、シンガポールでは、新型コロナウイルスに対して矢継ぎ早に様々な対策が出されてきました。

・海外からのシンガポール入国制限(実質外国人の入国は不可)

・海外からの帰国者の隔離(14日間の隔離措置)

・サーキットブレーカー期間設置 4月7日~6月1日まで(当初の5月4日までを延長)

禁止項目があり、ルール違反者には罰金、複数回の違反者は逮捕

飲食店の営業制限、エッセンシャルワークと見なされない仕事のオフィス使用不可(自宅での就労)

新たに5月12日からは、出入りのすべて人に登録義務SafeEntryを設ける(例外あり)。

Safe Entryについては、保健省ウェブサイト参照
https://www.moh.gov.sg/news-highlights/details/implementing-safeentry-and-safe-management-practices

 

さて、今後の外国人ワーカーの患者数の推移を注視する必要がありますが、現状の患者数推移を見てみると6月1日にはサーキットブレーカー期間は終了するのではないかと思われます。ただ、サーキットブレーカー期間終了後も、新型コロナウイルスが広がる前のような生活はしばらく戻ってこず、感染防止という制約の中で、シンガポールでの生活は続くことでしょう。

シンガポール政府はシンガポール人とシンガポールの法人に金銭面のサポートを早急に決めましたが、経済的なダメージは過去にないものとなりそうです。

どう舵取りをするか?シンガポールの政策に注目していきたいと考えます。

シンガポールに住む日本人の皆さんは、多角的な視点で日本との違いを見比べてみて、気がつかれることも多いはずです。

シンガポールの電車内はソーシャルディスタンスにより、立つ位置と座る椅子が限られている。