【三浦コラム】日本人が軽視しがちなサインの大切さについて
海外で仕事が初めての方は、日本ではあまりなじみのなかったサインというものに、戸惑いを覚えたりした人も多い事でしょう。今回は、私達日本人が軽視しがちなサインの大切さについて取り上げてみたいと思います。
すでに海外勤務をされた方は承知の事実ですが、サインはひじょうに大切なものです。 印鑑社会で育ってきた私達日本人は、どうしてもサインを軽く考えてしまう傾向にあります。しかしながら、気をつけねばならないのは、サインは日本での実印と同じく法的拘束力があります。自らのサインをした書類は、責任と義務を伴う証拠となるとお考えください。
シンガポールは明確な契約社会と言われ、それがこの国の発展の要因のひとつである事は否定できません。東南アジアの中でもその信頼性は高いとも言えます。合意した書類には必ずサインを求められますので、そういう社会の中では、自らの契約の意識を高める事も肝要です。
必要なのは内容を把握してサインするという事です。
責任者になると個人の契約以外にも色々な場面でサインを求められるでしょう。日々の業務がお忙しく、内容をご自身で確認できない方は、信用できる部下に内容を確認させる事もひとつの手段でしょう。ただし、その責任はサインをしたご当人にかかってくる事は忘れてはなりません。
日常の業務では、支払いのチェックにもサインが必要です。通常シングルサインが主流でしょうが、時にジョイントサイン(ダブルサイン)にされている会社もあります。ビジネスにおいて、当り前の事ですが、気を付けるのは滞ってはならない支払いが滞らないことです。もう1人のサインが取れない為に、口座に残金はあるにもかかわらず、支払いが遅れがちの会社もあると聞きます。この場合、社内規定においてどこまでシングルサインでチェックを有効化できるかを決めるのもひとつの手段です。
さて、株主がサイン権を持てうるかという質問を時々受けます。株主であっても役員でない人には、会社法上サイン権は持つ事はできません。しかしながら、会社の役員でなくとも社員であれば、サイン権を持つ事はできます。その場合、取締役会議の決議が必要です。
オフィシャルな契約書には、取締役会議の決議の上、コモンシールを使用した書類に「2人の役員のサイン」もしくは「1人の役員とカンパニーセクレタリーのサイン」が必要とされています。
社用でもプライベートでもわからない書類には、サインをしない事。これはわからない書類に実印を押さないのと同じ意味と考えてみてはいかがでしょう。時として、この書類にサインをする意味は?と立ち止まって考えてみるのも、自己の認識を新たにする上でも意味あることです。