【三浦コラム】海外進出に必要な約束事の明文化、そして法令遵守と情報の精査
近年シンガポールが属する東南アジア市場が注目されている事は、こちらに住む私にとっても喜ばしい事であり、より多くの日本企業がこちらに進出して欲しいとも思います。
しかしながら、時にして「騙された」との言葉も聞く事が絶えないのも悲しい事実です。騙したと名指しされる人や会社が、本当に故意に進出企業を騙したのでなくとも、そう思われる方がいらっしゃるのは、日系企業の進出をサポートする業務を行う私にとっても複雑な思いがします。
本当に故意に誰かを騙したのであれば、弁解の余地はないところですが、もし互いの行き違いがその騙したと言われる原因である場合には、その様な不幸な結果を互いの少しばかりの注意で防げたのかも知れません。
では、どういう事に気をつければよいのでしょうか?
決まり事は明文化する。
当たり前の事ですが、人は物事を自分の都合のいい様に記憶するものです。プライベートでも口約束で後日嫌な思いをした事はありませんか?
仕事ならばなおさらの事、互いに後々のトラブルを避けるには、約束事は文章に残しておく事です。これは互いの担当者が変わっても、仕事としての組織間の約束事であると証明できる証拠ともなります。
人によっては、信用しているから、面倒だからという方もいらっしゃるでしょう。また、既にお話しした事を文章にするのが失礼かと遠慮される方もいらっしゃるかも知れません。
しかしながら、本当にそれでいいのですか?と自問してみて下さい。おのずとその答えはでるのではないでしょうか。
eメールを使用して、確認の返信をもらっておく事も簡単でありますが、有効な手段です。
法律を遵守する。
シンガポールは法律が明確であるのですが、周辺国ではまだまだそのあたりがファジーであるケースも少なくないと思われます(法律があっても厳密に適応されていないケースも含めて)。法整備が遅れている面もあろうかと思いますが、現地の仲介者から東南アジア特有の「有力者の誰を知っている」といった顔の世界だと言われる事もあるかも知れません。実際、私は誰を知っているからこの話は誰を通せばうまくいく、と言われた事はありませんでしょうか?
しかしながら、人が変わればこれまで見逃されていた事も、指摘されるかも知れません。過去に遡って罰金などを求められる事もあるかも知れません。
何事も法律遵守で物事を進める必要があります。
得た情報を鵜呑みにしない。
自分の過去の成功例を語る方もいらっしゃいます。同じ国であっても、そもそも時期が異なれば経済市場も異なってきます。許認可であれば、過去の許可例が今に当てはまるとは限りません。また、成功例として語られる事例が実は成功でもなかったという事もあります。
他人が語る情報は鵜呑みせずに、誰かから得た情報の裏取りも必要でしょう。自分でも調べてみるというひと手間を欠かさない事です。色々と調べてみる中で、何かおかしな内容には気がつく感性が養われるものです。
前にもコラムで触れた事がありますが、相手が日本人だという事だけで下駄をはかせて過大評価していないか?という点も考えてみましょう。
市場がある場所には既に競合他社があり、競合があまりない国には市場がない、という東南アジア市場への進出は今まで以上に進出企業の力が試されるだろうと考えます。
過去の2つのコラムも合わせてご参考下さい。
【三浦コラム】本を読み、考える海外進出時のリスクについて
https://www.miura.sg/archives/755
【三浦コラム】何故海外では日本人に騙される人がいるのか?それを防ぐには?
https://www.miura.sg/archives/543