【三浦コラム】シンガポールで個人の起業について
シンガポールは会社を設立し易いという為か、起業してみようと一度は思われた方も多いのではないでしょうか?身近に自らの会社を運営されていらっしゃる方を目にするのも刺激になるでしょう。
今回はシンガポールでの個人の起業(会社設立)についてお話を、と思います。
シンガポールの500万人規模の市場性を考えてみましょう。
どれくらいのお客様が見込めるでしょうか?
物を売るのか?サービスを売るのか?売り上げは?それに占めるコストは?(オフィスを構えなければならないのか?店舗なのか?家賃と人件費は?)
事業を行うにあたって、シンガポールは東南アジアの中、突出した高コストの国であることを再確認されるのではないでしょうか。
まずは試算、この中でご自身の生活を保つ為の給与は忘れてはなりません(自宅の家賃、交通費、家族の生活費・医療費など)。
実際に市場調査をし、諸々を試算するとランニングコストがあまりにも高く、起業することを断念された方もいらっしゃいます。
ここの試算時には希望的観測は極力省いてみてください。
特に駐在の方は今の生活に(駐在員をひとり維持するのに)会社がどれくらいのお金を、総額使っているのかを調べてみるのもよいでしょう。
長年コンサルタントをしていますと、いろいろな方が相談に来られます。
私自身もずいぶん前になりますが、独立した一人です。基本的には応援したい気持ちは十分ありますが、(特に一定の年齢以上の方には)一生のことです。
蓄えた資金も入ってくるお金がないと加速度的に底をつきます。
対価を得ることのできるスキルを備えている方、時代とニーズに合った利益を生み出すものをお持ちの方は、スタートラインにつき易いと思います(スタートした後は、本人のがんばりと運も必要)。
反面、お勤めをされていらした方に時に見られる例ですが、会社のバックがなくなることの十分なご理解が不足していることもあります。会社あっての自分であったかもしれないということを、慎重に冷静に見つめ直す時間、自分のスキルの棚卸の時間が必要かもしれません。
自分が自覚している能力から数割差し引いたのが、他人が見る自分の評価だとも言われます。
また、やりたいこと、好きなことが商売になるとは限らないという現実も忘れてはなりません。誰も諫めてくれる人がいませんので、どうしても独りよがりになってしまいます。
これは自論ですが、できましたら、起業は体力・気力の充実した45歳までをひとつの目安としてはと思います。
起業の直後数年は大変です。それを乗り切るのはひたすら自分の体力・気力だと。
その中で3ヵ月、そして3年経た時に立ち止まって考えてみましょう。
これでいいのか、この先どうすべきなのか、と。
資金面では、最低期限は無給でも生活できる資金、そしてそれを越した段階では給与が出ること。時間を区切ることを課してはいかがでしょう。
無給が続くことは、勤めている間は想像できないかもしれませんが、精神的にもつらいものです。
注意する点ですが、小さなビジネスからとお考えの場合には、100%自己資金で起業されることをお勧めいたします。他の方と共同で資金を出し合っての起業は、時として弁護士を介してのトラブルに発展することがありますし、実際多くその事例を見てきました。
そして、起業の一番重要なことは、ご家族の理解。特に奥様の理解と協力が欠かせません。よくご家族で相談してみてください。
最後に手前味噌になりますが、個人起業者が注意すべきコンサルタントの選び方をご参考までに。
1=コスト 2=小回りが利くか? 3=適格なアドバイスをもらえるか?
3については、会計・税務の知識の裏付けのある慎重なアドバイスが大切です。
安易なNoProblemという回答は、Problemです。
シンガポールでは法律では、コンサルタントに特別な資格は必要とされていません。
相談者も相手を見極める力が必要とされています。
会社を始めることは装備が必要な山に登ることに似ています。
山に登るには十分な準備が必要なように、会社を始めるにもそれは重要です。状況の変化に応じた装備の変更、加えてチャレンジ精神も、です。
そして、遭難する前に山を降り、帰ってくる勇気も・・・・・・。
意外と知られていない会社の清算については、また別の機会にお話ししようと思います。