【三浦コラム】E-Scooter規制にみるシンガポールのルール作り
シンガポールでは、2019年E-Scooter(電動キックボード)の歩道での使用が禁止されました。
配達員の多くがE-Scooterを使用していたため、フードデリバリー業界に衝撃が走りました。
E-Scooterは、車道での使用はできないため、今回の措置は実質シンガポールでの使用禁止とも言えます。
*使用可能とされた自転車道路は、シンガポールには郊外など非常に限られた場所にしかありません。
PCN/自転車道路 | 歩道 | 車道 | |
自転車 | 〇 | 〇 | 〇 |
電動アシスト自転車 | 〇 | Ⅹ | 〇 |
電動キックボード | 〇 | X | X |
電動車椅子 | 〇 | 〇 | X |
*PCN=Park Connector Network、電動車椅子=Personal Mobility Aid(PMA)
ここに至るまで、メディアでも何度も取り上げられるほどに、歩道での多数の事故を起こしていました。
シンガポールに住む方であれば、歩道で接触しそうになり、ひやりとした経験のある方も多いのではないでしょうか。
何度か使用上のルール変更はあったものの、根本的な解決にはならなかったのも、最終的にこういう結果となりました。
LTA(Land Transport Authority)の今回の決断にいたる説明
Decision to restore footpath safety painful but necessary
日本人だとここでふと疑問が生じるはずです。皆が乗り始めた時にきちんと検証し、法整備をしておけばよかっただけではないか?と。
実はこの点が日本とシンガポールの大きく異なるところだと考えます。
総じて他のことにも当てはまる「ルールの決め方」でしょうか。
日本
新しいものは、細かい点までルールを決めて、導入。
・プラス点・・・・・・ルールが明確。
・マイナス点・・・・・・スピード感に欠ける。便利なものもルールが決まるまで、使用できない。
シンガポール
まずは様子見、そして周りの声も聞きながら、必要に応じてルール決め。
・プラス点・・・・・・スピードが早い。
・マイナス点・・・・・・ルールがグレイ。昨日まで大丈夫だったのが、突然ルール違反となるケースもある。
どちらが優れているとうものでもなく、考え方の違いと言ってもいいかも知れません。
さて、ここで日本人が気をつけることは、今現在問題ないとされていることも、突然のルール変更があり得る、ということです。
グレーゾーンがブラックだとされるケースがあるということには、細心の注意が必要です。
許認可等が必要なのかどうか、実際それ自体を行っていいのかどうか?疑問に思うことがあれば、監督官庁などに合法・違法を問い合わせすることをお勧めいたします。
ちなみにシンガポールでは、配達員の抗議に対して、E-ScooterからE-Bike(電動アシスト自転車)・自転車への買換えの補助を打ち出すなど、突然の法改正に戸惑う対象者への対応も迅速になされました。
*E-Bikeは車道での利用可能(上記一覧ご参考)。
Strait Timesの記事(11月8日)
$7m grant to help food delivery riders affected by footpath ban replace their e-scooters with other devices
こういう点は、フットワークの軽いシンガポールのプラス面とも言えるでしょう。
市民がよく使うフードコートのテーブルにも廃棄に関わる告知があり、E-Scooterの廃棄処分を広く推奨しています。