【三浦コラム】シンガポールでの生活費は?

 海外での生活、意外と勘違いされるのがその生活費です。
 今回はシンガポールで暮らす日本人の生活費について触れてみたいと思います。

 物価が高いと言われる日本から来られると、発展途上国というイメージの強いアジアの国は物価が安いだろうと思ってしまいます。
 しかし、海外で日本人が暮らすという方向から考えますと、シンガポールがけっして物価が安いとは言えないことがお分かりになると思えます(もちろん、まったくの地元の庶民と同じ生活をするのであれば、話は別ですが、大抵の日本人が日本人としての生活習慣を当地に持ち込み日々暮らしています)。

 まず、皆さんが最初に驚くのは、住宅費です。シンガポールは景気状態による賃貸料金が乱高下する特徴を持っています。1996年をピークとした家賃高はその後アジア発の通貨危機より低迷を続けたものの、数年前から高騰をし、踊り場かと思ったところ、現在(2010年)は賃貸料金が、再び上がってきているようです。
 上限があるにしろ会社から補助が出るであろう駐在員の方と、家賃を自己負担せねばならない方とは、考えも異なるかもしれません。

 お子さんがいらっしゃる方は、教育費は避けては通れません。日本と同じような安価な義務教育を受けられる環境はありません。日本人学校は日本人会の運営であり、所属する企業が日本人会へ入会しているか、個人で日本人会会員であるかの条件が必要です(例:入学金:所属企業が法人会員の場合4000ドル弱、個人会員の場合7000ドル程度、授業料とバス代で毎月800ドル*注=目安として、聞き取りした数字です。正確な数字は該当団体に正式にご確認ください)。
 インターの授業料はそれを上回るものです(日本人学校の2倍程度~が目安)。地元の学校に行くという選択は入学の難しさなどより、あまり一般的ではありません(これもまた国民とその他で授業料が異なります)。
 また、将来の進学のことも考えると塾の費用もおろそかにできません。

 医療費につきましては、通常駐在員の方は海外旅行保険に入っているはずですが、他の形での滞在者の皆さんは何らかの保険に入られることをお勧めいたします。この国の医療費の高さは、日本の医療保険制度に守られた日本人にはちょっと想像できないかもしれません。
 出産費用もけっして安くはありません。

 食費については、家庭では日本料理を食べると思いますが、日本からの輸入の食材などは、当然日本よりコスト高となります。

miurajul10 交通手段は幸いなことにシンガポールは外国人でも利用が容易ですし、タクシーも安価な料金で走っています。その為、車を持つということは、以前と比べ近年駐在員の中でも少なくなってきているようです。これは車自体そして車を持つ権利(COE)が高価であること、その上に維持費もけっこうな負担になるという点。タクシーを含めての公共交通機関を使うことの方が現実的に安価であるという理由によるものと考えられます。
 反面、個人負担で仕事やプライベートで車が必要な方は、思った以上の出費となると思えます。

 年に何回か日本へ帰国する予定もあるのではないでしょうか?会社の補助で帰ることもあるでしょう。ただ、プライベートで、また緊急に一時帰国しなければならない時もありえますので、その費用も必要でしょう。

 他に必要な費用を考えますと、嗜好品のタバコ、アルコール類・日本の本、新聞や雑誌なども日本と比べ高価、ゴルフ代・習い事などにも費用がかかります。
 
 シンガポールに来られている日本人の方の収入はその方のお仕事によって千差万別です(会社の補助があるかないかなども)。十分に恵まれている方は気にする必要はないかもしれませんが、大抵の方は決まった収入の中、生活費をどこでどう調節するか、その点を考える必要があります。

 最近日本では、マスコミによるシンガポールへの移住が話題となっています。事実所得税も安価ですが、その差額でもって日本と同じ生活レベルを維持するには、日本以上の支出が必要かもしれません。
 特にご家族で移住を検討されている方はどのような生活レベルを望むのか、家賃、子供の有無・人数と教育、普段の食生活、これらを十分過ぎるほどに考慮したうえで、決めて頂くことを強くお勧めいたします。