【三浦コラム】シンガポールでの外国人(日本人)ビザ取得のさらなる厳格化について

 近年シンガポールでは、就労ビザが取りにくくなったという声を聞きます。また、新規でシンガポールに進出する企業の担当者からも、ビザ取得は大丈夫かとのお問い合わせも確認事項に目にする機会が増えました(ない場合には、当方からその旨のご説明を差し上げています)。

 ご存じの様に、外国で働くには就労ビザを取得する必要があります。該当ビザなしでの就労は言い逃れようもない違法行為であり、企業・個人共に不利益を被る可能性があるので、軽く考えるのは禁物です。

 今回は就労ビザについて考えてみたいと思います。

 ここシンガポールで日本人が働くには、EP(P1,P2,Q1)・Sパスなどがあります(一部を除いて、多くの方がこれらのビザに該当)。

 改めて各ビザの取得条件を(固定)月給ベースで見てみましょう(13年6月現在)。
・EP(Employment Pass)
P1=8,000ドル以上
P2=4,500ドル以上
Q1=3,000ドル以上
*Q1は卒業大学・年齢・就労年数等によって、給与に加算が必要。3,000ドルは一部優秀とされる大学の新卒・第二新卒のみ。
・Sパス=2,000ドル以上
*Sパスは、従業員数の20%の以内の枠で、申請可能。また、別途LevyFeeがかかる(10%まで250ドル、20%まで390ドル)。
(注)枠の元となる従業員数の計算方法はMOM(人材省)のウェブサイトをご確認の事。

 来月7月1日(2013年)からSパスの取得条件が変更になります。
・最低給与が、2,200ドル。
・卒業大学・年齢・就労年数等によって給与に加算が必要(現在のQ1と同様と思われる措置が取られる)。
・企業が取得可能とされる従業員に対する枠が、20%から15%にと減少(サービス・セクター)。
・LevyFeeが、10%までが300ドル、20%までが450ドルとなる。
(注)計算方法については、上記注と同じ。

miurajun13 シンガポールで企業活動を行うに、気をつけねばならない点は、日本人(外国人を含む)の雇用です。業種・職務内容によって、日本人の雇用が必要で、それにより円滑に業務が行える場合には、その従業員のビザが許可されるかという事を確認する必要があります。
 今回のSパスの条件厳格化は、日本人を含む外国人を雇用している企業にとって頭の痛いところだと思えます。今回Sパスだけに規制が強化されるのは、 Q1レベルのビザ申請予定者・保持者が、取得・更新時にSパスに流れた為だと考えられます。その為、EP(P1,P2,Q1)が減少した反面、Sパスの総数が上昇しました(11年12月113,900人、12年12月142,400人)。

 日本ではシンガポール進出ブームがあると言われています。この事は当地シンガポールの無料新聞MyPaperでも、More Japan firms venture hereと題されて、6月17日付の記事で取り上げられた程です。

 Sパスは国民と永住権保持者の雇用がある事が前提のビザの為、業種や規模にもよりますが、Sパスを進出すぐの会社が得る事ができるかどうかも考えなくてはなりません。

 弊社もシンガポールへの進出のご相談を受けておりますが、次々と出されるビザの取得条件の厳格化が、この国での企業活動にどう影響するかは、注視して行く必要がありそうです。