【三浦コラム】シンガポールの雇用法の改正に関わる注意点について

 シンガポールでの経済活動にとって、4月の大きな話題は雇用法(EMPLOYMENT ACT)の変更ではないでしょうか。
 4月1日から、改正された内容が適用となります。
 具体的なところでは、今までは月給2,000ドルまでが雇用法で守られ、それより多くの給与所得の社員は各自が結ぶ雇用主との契約書(EMPLOYMENT AGREEMENT)内容が本人の雇用を保証するものでした。 このたびの改正では、対象の給与が2,500ドルに引き上げられました。

 加えて、4,500ドルまでの給与の労働者(PME=Professionals, Managers and Executives)に関する残業等の権利も、雇用法によって守られる事となりました。 PMEと称される社員に関して雇用主が気を付ける点は、雇用契約書の内容が雇用法の要件以下である条項があるかないかです。 もしある場合には、速やかに改正をすると共に、その権利を遡って保証する義務が生じるでしょう。

miuraapr14 ビザ取得条件の関係で、永住権をお持ちの方で例外がいらっしゃるかもしれませんが、シンガポールで働く日本人で、2,500ドル以内で働いている人は、まずいらっしゃらないと思えます。ただ、4,500ドルとなると、対象となる日本人の方はある程度の数、現地採用の方を中心にいらっしゃると思えます。
 働く方も自分本人がどの様な権利を持つのかも、知っておくとよいでしょう。雇用主である方は、雇用している日本人も含めた社員がどの様な権利を持つことになったのか、改正する内容があればそれを行う必要があります。

 このたび、違反者の罰則規定も強められた事も、留意点のひとつです。知らなかったでは通用しないので、ご注意下さい。

 社員を雇用する会社組織である限り、どの様な小さい組織であれ、社員と会社との約束事である就業規則を作成するのがお勧めです。 そして、その就業規則は必ず雇用法との照らし合わせと改定を、その都度行う事が肝要です。

 シンガポールの雇用法は、従来雇用主に有利にできていると言われてきました。確かに他の東南アジアの周辺諸国と比べても、より企業活動がしやすい様に配慮されたものだと思えます。反面、高給になった中高年はいきなり雇用の場が奪われる事もあるのも事実です。
 失業保険のないこの国では、収入をいきなり絶たれるのは、とてもつらいことだと思われます。
 ただ、雇用主である経営者にとって、費用を抑制するには、高給社員で雇用法での保護のない労働者の雇用に手を付けるのが業績改善の即効薬とも言えます。

 社会は色々と痛みを伴い変わっていくのだろうと思えます。

 今までは企業保護の為、労働者側に負担を強いる事が多かったのだろうと思えます。これからはより労働者(国民の大多数)保護の方向に進んでいくのではないでしょうか。