【三浦コラム】揺れる東南アジア、政治的安定に見るシンガポールの優位性
今年に入り東南アジアでは色々と不安要素が発生・増長してきました。
長年続いている政治的対立を発端とするタイの5月のクーデター。南沙諸島・西沙諸島におけるフィリピン・ベトナムと中国の対立。何とか選挙を勝利に持ち込んだものの、依然として国内の野党勢力と対立関係を残し、航空機行方不明で機能不全を明らかにしたマレーシア政府。そして、権力基盤が大きく変わり得る7月に行われるインドネシアの大統領選。
さまざまな民族と宗教とが混じり合っている東南アジア、各国とも独自の国内の懸案事項を抱えています。
そういう中で、けっしてシンガポールが政治的にまったく揺れていないわけでありません。小さな揺れでしょうが、最近は(国民の年金と医療費の根源となる)CPF制度に対する一部国民の政府へ反発があったばかりです。
しかしながら、長年政権を維持している政府与党(PAP)は、草の根運動たる組織も活かして、広く国民の声を拾っています。最近は低所得者層と高齢者への政策が相次いで出されたのも国民の声を反映しての事でしょう。
各政策・制度の現状に関し、国民の不満は表に現れながらも、安定した政権基盤を誇るシンガポールは、私達外国人が経済活動を行うに際し、大切な後ろ盾を備えていると言えるでしょう。
シンガポールが誇る政治の安定(それを支える汚職のなさ・治安の良さなど)の利点の反面、物価の高さが周辺国と比べて突出しています。
これは日本から出張などで初めて来られた方が、まず驚かれる点です。
改めて書きますが、シンガポールの物価はけっして安くはありません。ある側面を見ると、東京よりも物価が高いと思えるでしょう。
狭い国土に多くの企業が進出し、国自体も発展すれば、そのコストは周辺の東南アジア諸国と比べても、一段と高いものとなる事は必定と思わなければなりません。
企業活動では、人件費とオフィス・住居の賃料が目立つ事でしょう。
では、シンガポールで経済活動をする事は、そのコストを補えるだけの利点があるのか?
何ができて、何ができないのか?どういう機能をシンガポールのオフィスに持たせるべきなのか?これを精査する必要があります。ここ数年に渡って、一種のシンガポール進出ブームとも言える、ムードに流された、バスに乗り遅れるな的な、日本からの企業進出が目立ちました。
果たしてそれでよかったのでしょうか?
明確な目的意識と厳格なコスト計算なくして、実情に応じた調整なくして、成功はおぼつきません。企業の東南アジアのハブ機能を備える地として、シンガポールの位置づけは弱まるどころか、ますます強まってくるはずです。
海外進出に際し、対費用効果を考慮に入れた上でのシンガポールでの進出検討・拠点づくりにこれからも力添えできる仕事を続けていきたいと思います。