パートタイム労働者(雇用主の義務 / CPFと有給休暇)について

シンガポールの日系企業も、パートタイマーを雇用している会社が多いと思います。
この国では、(特に日本人の間では)よく雇用主の権利が強いと考えられていますが、実はパートタイマーについては「法的に」守るべき義務があるのも事実です。

パートタイマーは社員ではないから、時給だけ払っておけばよいと考えるのは早計です。
「他の会社もそうやっているから問題ない」と思い込んでいると、思わぬ落とし穴に落ちてしまいます。
(注)シンガポールの摘発は通報ベースが主ですので、摘発されていないのは、ただ単に通報されていないためです。

今回は、CPF(Central Provident Fund Board)とMOM(Ministry of Manpower)について取り上げます。

CPF積立金について

CPFはCentral Provident Fund Boardのことで、中央積立基金とでも日本語訳をつけるとわかりやすいと思うのですが、給与所得者が企業である雇用主とお金を出し合い積み立てる年金基金です。

シンガポールの年金制度は、自己積み立て方式であり、個人が各自CPF口座を持っています。
積立金は、年金のみならず教育費や住居費、そして医療費に使われることもあり、シンガポール国民の生活の根幹をなすものです。

また、貯蓄された金額は、市場金利よりも高い利子がつくことでも広く認知されています(55歳になると必要以上の金額は引き下ろし自由なため、条件付きの利息がよい貯蓄口座とも言えるでしょう)。

現在、シンガポール国民と永住権保持者のみが、この口座を持つことができます。

企業は、各月の給与額で算出される金額を給与月の翌月14日までに、その社員のCPF口座に定められた金額を振り込まなければなりません。

実は勘違いされている方もいらっしゃるようですが、これは正社員同様にパートタイマーにも、その月の収入に合わせてCPFを納付する義務が企業にはあります。
*55歳/60歳/65歳/70歳という年齢、50ドル/500ドル/750ドル/6000ドルと給与金額によって納付金額が異なりますので、要確認
*金額面では、50ドル以上は支払う義務あり。

詳細は下記をご参照
https://www.cpf.gov.sg/content/dam/web/employer/employer-obligations/documents/CPF%20con%20rates%20from%201%20January%202023.pdf

パートタイマーだから、と支払いをしていないなど、ありませんか?

有給休暇等について

雇用主は、Emloyment Act(雇用法)に従い、有給休暇/医療休暇/入院休暇、そして育児休暇をパートタイマーにも与えなければなりません。

詳細は下記をご参照
https://www.mom.gov.sg/employment-practices/part-time-employment/leave

例:4時間週5日間働くパートタイマーの場合
同じ業務のフルタイマー(正社員)が、1日8時間5.5日間で7日間の有給休暇
3ヶ月働いた後のパートタイマーは、
【(20時間x52週)/(44時間x52週)】x7日間x8時間=25.5時間 *52週=1年間
よって、1日4時間のため、有給で6~7日休めることとなる。

有給買取や病欠なども詳細は上記MOM(Ministry of Manpower)サイトに詳しく書かれてあるので、間違いのないように運用することが肝心です。
なお、不明な場合には「どのような休暇を規定すべきか?」MOMに質問をされることをお勧めいたします。

ちなみにとある会社では、パートタイマーの休暇に関しては、正社員と同じにして供与しているそうです。
雇用主側では労働時間計算の手間を省け、パートタイマーの方にも気持ちよく働いてもらえるということで、双方に利がある方法だとも思えます。

近年のシンガポールの労働市場は、弱者救済的に労働者の権利が強くなってきています。
日本人同士「シンガポールは企業側が強いから」と言う思い込みだけですと、摘発された時にはブラックリストに入れられ、新規や更新すべき労働ビザの許可が出ないこともありますので、注意してください。

繰り返しますが、何かわからないことがあれば、素人同士で情報交換するのでなく、関係部署に直接問い合わせること、これがシンガポールでは肝心です。

さて、皆さんの会社ではいかがでしょうか?