【三浦コラム】4月に考える、シンガポール人の就職について

 4月になりました。日本では早めの桜が咲き、4月1日に一斉に各社の新入社員の入社式が行われました。大手企業の入社式は、私達が住む海外でも見る事のできるNHKワールドプレミアムのニュースでも目にしました。
 いわゆる着慣れないスーツに身を包み、初々しい姿、その画像を遠く海外のシンガポールから見てふと思いました。 改めて考えると、入社式というものをここシンガポールでは耳にしません。
 ではどの様な方法で学生は仕事を得ているのでしょうか?

miuraapr13 ここシンガポールでは、7月が卒業の月となります。実際は8月から働き始める事になるのが通常です。
 卒業する学生を対象にした大学サイドが主催する就職説明会などもあります。
 しかしながら、この国では学生が自分で企業(人事担当者)にアプローチをして仕事を見つけるのが通常です。勿論の事ながら、学生時代に企業に行くインターンによって、それを経験のひとつとして就職活動をします。他方、企業サイドはそのインターン時に、めぼしい人材には声をかけて人材の確保をするという側面もあります。

 ただ、日本と異なり、最初に入社した会社で社会人のキャリアの多くの側面が決まるものではありません。
ここシンガポールでは、転職はその個人に何ら不都合なく、当たり前の社会風土です。日本も昔と比べて転職がそうは珍しいものではなくなっているとは思いますが、シンガポールでは転職を経験していない人の方が珍しいのです。転職をする事で、昇進・昇給する面もあります(ちなみに新卒の給与平均は、政府の資料によると月給2700ドル代~3600ドル代)。また、その会社で昇進・昇給した人も、ヘッドハンティングなどで、より良い条件があれば、躊躇なく他社へ動く事も通常です。
 職務経験を積んだ上での転職、その事がポジションと給与の上昇につながる社会、それは日本人とシンガポール人の会社との気持ちの距離感の違いとも言えるのかもしれません。

 余談ですが、最近日本で話題となっている海外就職ですが、職務経験がない日本人が語学のハンデを負ってシンガポールで就職とはちょっと考えづらいのが現実です。
 因みにシンガポールでは大学の増設(5つ目と6つ目)が発表されており、現在27%の進学率を2020年には40%にするとの計画が発表されています(ただし、実際にはシンガポールの3大学NUS/NTU/SMUが主流)。
 この事はますます若い日本人の皆さんにとって、シンガポールでの就職に新たなハードルとなるとの考えもできます。

 インターンとは、シンガポールでは実践的な自分の履歴書に書くことのできるものです。この事は、シンガポールで働くには、何が出来るかが問われると言っても過言ではないからでしょう。